偉大な名伯楽の思いをつないだ。元騎手の蛯名正義調教師(54)が開業2年目、のべ9頭目のJRA重賞挑戦でうれしい初制覇を決めた。

騎手引退後に師事した藤沢和雄元調教師(71)から引き継いだ2番人気レッドモンレーヴ(牡4)で、豪快な差し切り勝ち。勝ちタイムは1分20秒3。優先出走権を得た安田記念(G1、芝1600メートル、6月4日=東京)へ勢いをつけた。

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「ふ~、勝った…」。蛯名正師は心底ほっとした。レッドモンレーヴが4角10番手から、上がり32秒6の末脚で突き抜けた。2着ウインマーベルに半馬身差。「プレーヤーなら自分で乗って納得するけど、今は応援するだけ。全然違いますね」。騎手としてJRA通算2541勝、地方、海外合わせてG1・31勝、重賞161勝。百戦錬磨の名手が立場を変え、背広姿で格別の1勝をかみしめた。

縁に導かれた。レッドモンレーヴは藤沢和元師が最後の勝利を挙げた馬。厩舎解散後に蛯名正厩舎へ加わった。「(藤沢和)先生から引き継いだ馬で先生が得意だったレース。感慨深いですし、それも縁。先生にこれだけの馬を預けてもらって、結果を出さないと、というのはあったのでほっとしています」。藤沢和元師が8勝したレースでの重賞初制覇。巡り合わせもかみしめた。

次は大舞台だ。中山での前走は出遅れが響いたが、2勝2着1回と得意の東京マイルでG1が待っている。同師は「この上がりであれだけ余裕を持ってこられた。東京コースは合いますね」と手応えを示す。「いい状態で出すことが自分らの仕事。何とかいい状態でレースに向けて出したいです」。息つく間もなく先を見据える師の目は、力強かった。【桑原幹久】

▽騎乗した横山和生騎手 (蛯名正師の重賞初制覇に)先輩としてお世話になったので、ちょっとでも恩返しができてうれしいです。調教からコンタクトをとって素晴らしい馬だと思ったので、馬のために勝ててよかったです。

◆レッドモンレーヴ ▽父 ロードカナロア▽母 ラストグルーヴ(ディープインパクト)▽牡4▽馬主 (株)東京ホースレーシング▽調教師 蛯名正義(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 9戦5勝▽総収得賞金 1億1723万円▽馬名の由来 冠名+私の夢(フランス語)