鮮やかな逃走劇だ! 8番人気の伏兵セルバーグ(牡4、鈴木孝)が、逃げて後続を突き放し、重賞初制覇を飾った。

松山弘平騎手(33)は、夏の中京開催リーディングを引き寄せる勝利で、弥生賞(タスティエーラ)以来の今年重賞3勝目を奪取。鈴木孝志調教師(52)は、20年きさらぎ賞のコルテジア以来、2度目のJRA重賞制覇となった。

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太陽が照りつける灼熱(しゃくねつ)の中京競馬場を、輝く鹿毛の馬体が躍動した。セルバーグが2着に1馬身半差をつける完勝で、念願の重賞初制覇。松山騎手はゴール直後に右手を突き上げ、ゴーグル越しでも分かる満面の笑みを見せた。「前走で結果が出せませんでしたが、こうやって続けて乗せてもらったことに感謝しています。勝てて良かったです」と喜んだ。

完璧な競馬だった。騎手と調教師がレース前に打ち合わせをし「逃げられるなら逃げよう」と積極的な競馬を画策。好スタートからうながして先手を取ると、思い通りのマイペースに持ち込んだ。

「枠も良かったですし、馬場状態も(最終週で)悪かったですし、長くいい脚を使えるこの馬に向きました。持ち味の持続力が生きましたね」

最高気温33度を超える過酷な条件下で、最高の走りを引き出す見事なエスコート。2ハロン目から11秒台のよどみないラップを刻み、直線早々に後続を引き離すと、最後の1ハロンも12秒4で踏ん張った。

目指すはサマーマイルチャンピオンか。今後はオーナーと相談してから最終判断となるが、サマーマイルシリーズ第3戦の関屋記念(G3、8月13日=新潟)を視野に入れる。「マイルで結果が出ているし、この路線で」と力強く話す鈴木孝師。松山騎手も「これからもやってくれると思います」と期待を寄せた。マイル界に誕生した“逃げの新星”は、勢いそのままにさらなる頂へ。セルバーグと松山騎手の挑戦は始まったばかりだ。【藤本真育】

◆セルバーグ ▽父 エピファネイア▽母 エナチャン(キンシャサノキセキ)▽牡4▽馬主 桑畑夏美▽調教師 鈴木孝志(栗東)▽生産者 前谷武志(北海道新ひだか町)▽戦績 14戦5勝▽総収得賞金 9780万4000円▽馬名の由来 人名より