「現役世界最強馬」がいよいよ始動する。今週は天皇賞・秋(G1、芝2000メートル、29日=東京)が行われ、昨年覇者で国内外G1・4連勝中のイクイノックス(牡4、木村)が連覇を狙う。「ロンジンワールドベストレースホースランキング」のレーティング129ポンドの世界1位を、4月から半年も守り続ける昨年のJRA年度代表馬。主戦のクリストフ・ルメール騎手(44)は「5冠」に自信たっぷりで、G1馬5頭が集結する一戦で実力を誇示する。
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「現役世界最強馬」。大げさではなく、それを名乗る資格が今のイクイノックスにはある。G1・9勝の名牝アーモンドアイを筆頭に、幾多の名馬に騎乗してきた名手ルメール騎手は「彼は全部を持っています。スピード、スタミナ、ストライドが大きいし、伸びる。強い気持ちもある」とほれ込む。
昨年の天皇賞・秋。パンサラッサの大逃げを最後に差し切った映像は名勝負として世界に拡散された。有馬記念を圧勝し、日本の年度代表馬として迎えた4歳の今年は、3月のドバイシーマCを楽勝して再び世界をうならせた。上半期を締めくくる6月の宝塚記念を豪快な大外まくりで制し、国内最強をアピールすれば、欧州ではドバイで破ったウエストオーバー、ザグレイ、モスターダフが主要G1を快勝。無敗で凱旋門賞を勝ったエースインパクトを抑え、12日に発表された最新のレーティングでも世界一の座をキープする。日本だけでなく、世界も注目の秋初戦だ。
宝塚記念後の夏は福島県のノーザンファーム天栄で過ごし、秋の最大目標はジャパンC。そのステップとして天皇賞・秋の参戦が決まった。9月末に美浦へ帰厩後は順調に調整は進み、1週前追い切りは美浦ウッドで6ハロン(1200メートル)78秒9-11秒8の猛時計を軽々とマークした。感触を確かめたルメール騎手は「バッチリですね。宝塚記念はベストコンディションではなかったと思うし、今回はほとんどベスト。何も心配ない」と期待する。ダービー(2着)以来の再戦となるダービー馬ドウデュースに対しても「あの時は負けたけど、もう1年半前のこと。イクイノックスは強くなりました。自信があります」と豪語した。
管理する木村師もその存在の大きさに驚き、気を引き締める。「街中で食事をしている時や買い物をしている時に声をかけられるんです。外国のセリで海外の著名なトレーナーとあいさつをした時も“イクイノックスの木村”として、覚えられていました。以前はこんなこと、あるわけないじゃないですか。天皇賞ウイークも外国から来る装蹄師の方がうちの厩舎を見たい、と。ジャパンCへ向けても外国メディアからいくつもの取材申し込みをいただいている。イクイノックスというのは、それだけすごい馬なのだとかみしめています」。多くの競馬ファン、関係者にとって血湧き肉躍る2分間へ向け、勝負の1週間が始まる。【木南友輔】
◆天皇賞・秋の連覇 天皇賞優勝馬の同レース再挑戦が可能になった81年以降、02、03年のシンボリクリスエス、19、20年のアーモンドアイが達成。イクイノックスが勝てば史上3頭目の快挙になる。
◆ロンジンワールドベストレースホースランキング IFHA(国際競馬統括機関連盟)が世界の主要レースを対象にしてレーティングを毎月発表。芝、ダートと5つの距離区分が設定され、加盟各国のハンデキャッパーの合議制になっている。レーティングには近代競馬発祥の地、英国の重量を示すポンドが使用される。翌年に英国で年間表彰が行われ、過去の日本馬は14年ジャスタウェイがドバイデューティフリー(現ドバイターフ)を勝ってレーティング130ポンドを獲得し、1位に輝いた実績がある。