24日に第68回有馬記念が開催される。これまであまたの名馬が名勝負を演じ、ファンの記憶に刻まれてきた。引退した名馬はその後どうしているのか-。「有馬記念を制したHEROたち ~スポーツ紙及び夕刊紙による9社合同企画~」として、グランプリホースのゴールドシップのもとを訪れた。
12年の有馬記念馬ゴールドシップは、北海道新冠町のビッグレッドファームで種牡馬生活を送っている。馬産地日高が産んだ「黄金の船」は、平成のターフでG1・6勝という輝かしい実績を積み上げて帰郷。父ステイゴールド(15年2月没)と同じ馬房で過ごし、16年スタッドインから、8シーズン目を迎えた今季も100頭超えの交配をこなすなど、第2の馬生でも存在感を示している。
敷地内の池で羽を休める白鳥にも劣らないほど、その雄大な馬体は白さを増したが、大きな完歩で大地を踏みしめるように歩を進める姿は、現役時の面影を強く残している。スタリオン主任の木村浩史さんは「健康で体力もあります。『自分がボス』という縄張り意識や自己主張の強さは相変わらずですが、年を重ねてだいぶ角が取れました。種付けでもオンとオフの切り替えが早く、とても扱いやすい」と近況を説明する。
現在は来季に向けて充電中。6月末から12月上旬までは夜間放牧で英気を養っている。コロナ禍が明けてからの一般見学(午後1時30分~同3時30分)では、全国各地から多くのファンが訪れている。木村主任は「お子さま連れや若いファンの方が目に見えて多くなりました。ウマ娘(プリティーダービー)のキャラクターの模写を送ってくださる熱心な方も。一昨年にはユーバーレーベンがオークスを勝ってくれましたが、何とか悲願のダービー馬を」と期待を寄せている。
苦楽ともにした今浪厩務員が挙げるベストレース
キャリア28戦の中でベストレースはなんだろうか。記憶に残る走りが多い中で、1つに絞るのは難しい。苦楽をともにした今浪厩務員は、12年の有馬記念を真っ先にあげた。
8カ月前に皐月賞を制した中山競馬場。そんな思い出の地に、実はわだかまりが残っていた。「あの時は『ワープ』『内をすくった』と言われていたから。『アイツの強い競馬をみんなに見てもらいたい』と思っていた」。そんな気持ちが伝わったのか。今度は違った。
ただ勝つだけでなく、文句を言わせなかった。3コーナーで最後方からスパートしたのは皐月賞と同じ。だが、駆け抜けたのは最内ではなく大外だった。薄曇りの空と同じグレーの馬体が、荒れた芝の上で弾む。段違いの伸びで突き抜け、歴戦の古馬たちを力ずくでねじ伏せた。
ワープでもマジックでもない。10万人超の大観衆へ、左手で投げキッスを送った内田騎手は「『絵になるなあ』と思っ
た。芦毛の馬で、勝負服も赤と白。サンタクロースでホワイトクリスマスって感じで」と美酒に酔いしれた。今浪厩務員も「早めに仕掛けて大外をぶん回して、あれだけ勝ったというのがものすごく良かった」と留飲を下げた。