28日最終レース終了後、中山競馬場のパドックで31日付で引退する田中勝春騎手(52)の引退式が行われた。来年から調教師に転身する。

主役は田中勝春騎手(52)。ファンの前に姿を現した時の勝負服には思い入れがあった。真ん中で2人のオーナーの勝負服をあしらった。右半分は黄色と茶色。左半分は黒。前者は鈴木芳夫氏のもので、後者はシンコウの冠名で知られる安田修氏のもの。田中勝騎手は「2人ともこの日を楽しみにしてくれていたと思うんだけど、亡くなられた。きっと今ごろ天国で2人で酒でも飲んでいるだろうね」。お世話になったオーナーへの感謝を口にした。

そんな人柄に多くの人が集まった。中山で騎乗していた騎手仲間はローマ字で「katsuharu tanaka」とデザインされた青色のシャツを着て参加した。鞍上のスピーチの際には後輩騎手が「長い」といじる場面もあった。上下関係なく誰にでも愛される。人情味のあるジョッキーだった。

そして同じ日に騎手引退を迎えた柴山雄一騎手(45)にも気配りを忘れない。「時を同じくして柴山雄一が引退します。柴山君にもひと言お願いしたい(笑い)」といきなり振った。突然の出来事に柴山騎手は周りを見渡しながら登壇し「僕も勝春さんが大好きで、偶然同じ日に引退することになって。JRAにこうやっていられることが幸せかなと思います。皆さんの応援のおかげで頑張れました。またこれからも若いジョッキーがいるので、競馬を盛り上げていってください。ありがとうございました」とむちゃぶりに応えた。冬の中山の寒さを忘れさせるセレモニーだった。