今年に入り、厳しい寒さが続いています。1月末は特に寒くて、栗東トレセンでは、24日はマイナス2度、25日はマイナス1度で調教がスタートしました。雪がちらつき、屋外で取材をしていると、手がかじかんで、思ったように字が書けません…。そんな極寒のなか、素手で馬に乗る松若風馬騎手(28)の姿がありました。「こんなに寒いのに、ウソでしょ…」と思わずつぶやくほど、信じられませんでした。

追い切りの騎乗を終え、調教スタンドに戻ってくる松若ジョッキーに「おはようございます」と声をかけると「寒いですねえ」と言い、自販機で微糖の温かい缶コーヒーを購入。その後、そのコーヒーで手を温めながら、屋外のベンチに座って取材がスタートしました。今週の騎乗馬の話や、パドック、返し馬での馬の見方など、いろいろな話題の後に、いざ“本題”へ。冬でも素手で乗り続ける理由を聞くと、興味深い答えが返ってきました。

「理由はいくつかあるんですけど、まずは手綱から伝わる細かい変化を感じたいので、手袋をしないというのがあります。どんなに薄い手袋でも、素手に比べると感覚が鈍りますし、皮が手と馬の間に挟まっていると、変な感覚になるんです。あとは、馬に乗っている時だけ、なぜか手は寒く感じないんですよ。不思議ですよね。歩いている時とか、バイクに乗っている時はめっちゃ寒いので、分厚い手袋をつけるんですけど…(笑い)」

え、なんですか、その特異体質は…。うらやましいとまで思ってしまいました。これまで追い切り&レースでは、1度も手袋をつけたことがないというジョッキー。どれだけ寒くても、必ず素手で馬にまたがります。競走馬のトップスピードは時速約60キロメートルと言われているので、徒歩はもちろん、バイクよりも速く、それだけ冷たい風を受けるということになります。

それなのに寒いと感じないというのですから…すごいですよね。騎乗に集中している証なんだと解釈しました。また、「感覚をダイレクトに」というジョッキーの強いこだわりも寒く感じない要因のひとつなのかもしれません。

明日28日は、東京で根岸Sのアームズレインをはじめ、計3頭に騎乗します。東京競馬場に行くファンの方々はもちろん、テレビで観戦される方にもぜひ、鉄腕ならぬ“鉄手”を持つジョッキーの姿を見てほしいと思います。ちなみに、アームズレインについては「前走の内容が良かったですし、重賞でも通用していい力はあると思います。距離延長、初めての東京コースなど不安材料はありますが、楽しみの方が大きいです」と、期待を寄せていましたよ。【藤本真育】