【ドバイ(UAE)=1日】油断大敵だ。2年連続で現地入りした東京・桑原幹久記者の連載「ドバイ最前線」第2回は、世界の砂王フォーエバーヤング(牡4、矢作)の最終追い切りに注目。ダートコースでの最終追い切りで貫禄の動き。大一番を目前に文句なしの出来を誇るが、この日またがった主戦の坂井瑠星騎手(27=矢作)は、圧倒的人気にも気を引き締めた。

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ドバイの朝焼けをバックに、世界の砂王がゴムまりのごとくはずんだ。午前5時半すぎ。フォーエバーヤングが1周1750メートルのコースのゴール板前から、僚馬を前に置いて追い切りを始めた。残り5ハロンからペースアップ。直線も全くの馬なり。再びゴール板が近づくと、すっと鼻面を平行に並べた。余力十分。約19時間の移動で募った記者の疲労感は、鹿毛(かげ)の走りに一瞬で吹き飛ばされた。

肌感覚が重なった。朝イチは若干肌寒いが、日が出るとドバイは暑い。汗ばむシャツ姿でメイダン競馬場隣接のメイダンホテルに向かう。背に乗った坂井騎手が取材に答えた。「いいリズムで走れました。手応えは抜群でしたし、反応もよかったです。言うことない追い切りでした」。やっぱり。記者の感触が鞍上の自信とリンクする。連戦の疲れは? 「疲れはないです。変わらないのが何より」。馬場は? 「どこでも走れるので心配いらないです」。隙がない。

ただ、この質問には言葉を選んだ。「サウジCから2着のロマンチックウォリアーが抜け、メンバー的には…」。目元が締まり、勇敢さが増した。前走の激闘ぶりが評価され、世界単独トップのレーティングを得た。今回、圧倒的人気を集めるのは当然だが、好事魔多し。勝負に、競馬に絶対はない。質問から3、4秒間を置いた。「日本馬を含めて油断はできないメンバーだと思います」。不安から出た言葉ではない。自信満々だからこそ。負けるわけはない。そう思うからこそ。力強く、かぶとの緒を締めた。

勝負の1週間は、まだ始まったばかり。この日の朝現地入りする日本の関係者も多く、枠順抽選会が行われる2日も多くの馬が追い切りを控える。ただ、現状でフォーエバーヤングに隙は1ミリも見当たらない。「世界の矢作チームが(調整を)やってくれたので、自信を持って乗りたいです」。自信とは書き飽きた。確信と書いていいほどの主戦騎手の言葉たちが、記者の眠れぬ日々を予感させた。(つづく)