「世界の瑠星」と日本レコードV! 逸材ダブルハートボンド(牝4、大久保)が重賞初制覇を果たした。先週にBCクラシックを制した坂井瑠星騎手(28=矢作)に導かれ、2番手から3角先頭で押し切った。強豪牡馬を破ってJBCレディスクラシック除外の無念を晴らした。今後は優先出走権を得たチャンピオンズC(G1、ダート1800メートル、12月7日=中京)も視野に次走を検討する。

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額のハート2つは泥に汚れず白いまま。左トモに打たれたムチに応え、耳を絞ったダブルハートボンドが迫る牡馬たちを振り切ってゴールを駆け抜けた。雨に煙る掲示板に「レコード」の4文字が赤くともる。1分47秒5。京都最速だけでなく“日本新”だ。先週に世界を制した坂井騎手も、口元を緩めてたたえた。

「あのペースでもうなっていく手応えで、非常に強い内容だったと思う。この馬に乗る時はいつもリズム重視なので(ポジションは)特に決めてなかった」

BCクラシックのフォーエバーヤングを思い起こさせるような積極策だった。2番手からハナに並びかける勢いで追走。1000メートル通過59秒3の激流にも臆せず、パートナーを信じて3角先頭から押し切った。

28歳の名手に慢心はない。「BCはBCでありがたいですが、今日のレースは今日のレース」。栄冠を手に帰国してすぐ船橋でJBCに騎乗。その翌朝には栗東トレセンへ足を運んだ。ひたむきな競馬への情熱は燃えさかるばかりだ。

4歳牝馬には伸びしろしかない。体質が弱くデビューは3歳8月。馬なりの追い切り1本だけで初陣に臨み、既走馬相手に6馬身差で圧勝した。以後も間隔を空けつつ慎重に白星を積み重ねてきたが、目標としてきた3日のJBCレディスクラシックは除外。やむをえず牡馬に挑み、レース史上初の牝馬Vを果たした。

7戦6勝2着1回。この大器は底が知れない。大久保師は「この時計で走れたのはびっくり。しっかり(体を)ケアしたい」とした上で、チャンピオンズC挑戦にも「せっかく権利をもらえたし視野に入れて考えたい」と含みを持たせた。古都の空から暗い雨雲が去れば、いよいよ頂点が見えてくる。【太田尚樹】

 

◆ダブルハートボンド ▽父 キズナ▽母 パーシステントリー(スモークグラッケン)▽牝4▽馬主 (有)シルクレーシング▽調教師 大久保龍志(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 7戦6勝(うち地方1戦0勝)▽総獲得賞金 1億2169万2000円(うち地方1085万円)▽馬名の由来 2つの+愛情をつなぐ。父名、本馬の馬体より連想