元ダービージョッキーが、ユーモアを交えた表現で“転売ヤー”に苦言を呈した。
「おい
メルカリでシリウスのカード2枚出してる奴
全部こっちの自腹でプレゼントしてる物なんだから9000円はボリすぎやろ」
厩舎の公式SNSアカウントに23日、こんなポストをしたのは、騎手時代にシリウスシンボリに騎乗して1985年日本ダービーを制した加藤和宏調教師(69)だ。ファンに贈ったサイン入りのウマ娘カードが、フリマサービス「メルカリ」に法外な値段で出品されたことを受けての投稿だった。最終的に、同アイテムは2500円へ値引きされて売買が成立。すると厩舎公式アカウントには次のような文章がアップされた。
「約70%オフで即売れしてました
と誰かしらわたしに教えてくれたりしますので、売る時は炎上覚悟で売ってください」
再びエスプリの利いた表現。文末につく2つの笑顔の絵文字もセンスが光った。
プロ野球などでも、フリマサイトを利用したサイン転売を問題視する声は多い。競馬でも、騎手や調教師の直筆サインが多数出品されている。SNSでの一連の投稿について、加藤調教師本人に本心を尋ねた。
「こちらとしてはやっぱり、大事に手元に置いておいてほしい。最初から転売される前提でサインしているわけではないですからね。寂しいなという思いはあります」。
それでも常にサインの依頼は受け付けている。SNSの公式アカウントには厩舎の住所を明記。返信用レターパックが同封されていれば、丁寧にサインをしたためて送り返す。これほどファンサービス精神にあふれる関係者は、あらゆるスポーツ競技を見渡してもなかなかいないはずだ。
数え切れないほどサインを書き続けるのには理由がある。名門・二本柳俊夫厩舎の門下生。「この世界に入ったとき、馬に感謝し、競馬に感謝しなさいと教えられました。だからこそ、競馬を支えてくれるファンに恩返しをしたいという思いがあります。なので、転売されたからもうやめようとか、そういう小さな気持ちにはなりたくない」。ダービージョッキーは、どこまでも懐が深い。
さまざまなスポーツに関心を持つ。プロ野球は巨人ファン。オートレースなどの公営競技も、純粋に誰が勝つのかが楽しみで観戦する。23日の浜松オート、全日本選抜優勝戦で青山周平が連覇を遂げた直後には、祝福の言葉とともに「サインください」とちゃめっ気たっぷりに書き込んだ。競馬を愛し、スポーツが大好きだからこそ、ファンの純粋な気持ちをまっすぐ受け止める。「大多数のファンは、本当にサインが欲しいと思ってくれている。そういう人たちのことを大事にしたいんです」と、にこやかに語る。
全体から見れば、転売行為を行っているのはほんの一握り。とはいえ、厚意を踏みにじる振る舞いは罪深い。法に反していなかったとしても、良心にもとる。【奥岡幹浩】

