開幕から無傷の8連勝を完封で締めくくった菅野のピッチングは、攻略への糸口さえ見つからなかった。わずか3安打で三塁さえ踏ませない内容は、今季の好調さを裏付ける投球だった。
菅野の攻略へ、カギを握っているのが左打者だった。昨年までの被打率は右打者が2割1分9厘で、左打者は2割4分。左打者が特に打っているという数字ではないが、今季の成績は右打者が1割9分8厘で、左打者は1割6分8厘。カギを握らなければいけない左打者が右打者より抑えられているのだから、得点力が下がるのは当たり前だろう。
阪神打線もスタメンに6人(1人は投手)の左打者を並べた。しかし、今季の菅野は、左打者の内角攻めの精度が抜群にいい。ひと回りまで投手を除いた左打者5人に対し、25球中半分以上の13球が内角攻め。2巡目以降はさほど内角球を使っていないが、打者に内角を意識させるのは十分。特に内角に切れ込んでくるカットとスライダーで攻めるため、左打者は球数以上に内角を攻められたという意識が高くなっただろう。
左打者に内角球を意識させれば、1発のリスクの少ない外角球は、いつも以上に生きてくる。今試合は1-0の接戦で、1球の失投が命取り。そんな試合で菅野は、序盤の左打者への内角攻めが効いて、中盤以降は1発のリスクの少ない外角を中心にした攻めでしのげた。8回2死、代打の福留に対し、外角の153キロの真っすぐで見逃し三振。試合の後半で今試合MAXの直球で仕留められたのも、それだけ余裕のある投球ができていたからだ。
左打者対策を実行し、結果を出す菅野。対戦するチームは少ないチャンスでも機動力を使ったり、追い込まれてからでも思い切って狙い球を絞らせるなど、チーム単位の攻略法を考えなければ崩せない。そう思わせるほど、圧巻の投球内容だった。(日刊スポーツ評論家)