セ・リーグ制覇し笑顔を見せるヤクルト畠山和洋(2015年10月2日撮影)
セ・リーグ制覇し笑顔を見せるヤクルト畠山和洋(2015年10月2日撮影)

ヤクルト畠山和洋内野手(36)は現役引退を前に、1つだけわがまま? を通した。「きちんと決まるまで奥さんには言わなかった。気がついていたかもしれないけど、そういう目で見られたくなかったから」。家族に悲しい時間を長く過ごさせたくない。その思いを何よりも優先させた。

15年、105打点を挙げてチームをリーグ優勝に導いた右の大砲は満身創痍(そうい)だった。引退についても「なんの未練もない。ここまでボロボロになるまでやらせてもらえるなんて、こんな幸せなことはないですから」と話すほど。やりきったからこそサバサバしていた。それでも、家族には言わなかった。

優勝翌年の16年からリハビリの連続で、特にアキレス腱(けん)のケガは深刻だった。これまで日本球界では受けた人がいないような手法の治療を選択した。「患部を針みたいなので刺してグリグリやる。痛いのなんのって」。わざと内出血させることで組織の再生効果を高める治療。もう1度、チームの優勝に貢献するために必死だった。故障続きで、戸田を主戦場としながらも、家族の支えもあり、意欲は高かった。

19年シーズンは7月に守備に就くことを自分の中の目標に掲げて取り組んできた。だが、連鎖反応のように出る痛み。腰やふくらはぎにも故障が発症し、目標は達成できなかった。8月からは「今年が最後になる」という覚悟を持った。それ以降は「1つ1つの時間を大切に過ごすことを考えながらプレーしていました」。そうなって考えたのが家族の気持ちだった。やりきった自分以上に悲しむかもしれない。貫いたわがままは優しさの証しだった。【03~04年ヤクルト担当 竹内智信】

ソフトバンクとの日本シリーズ第3戦で左越えに本塁打を放つ畠山和洋(2015年10月27日撮影)
ソフトバンクとの日本シリーズ第3戦で左越えに本塁打を放つ畠山和洋(2015年10月27日撮影)