プロ野球番記者コラム

阪神井上の憧れは西武山川「練習すごく気になる」

<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム>

球界最年長投手は、はるか年下の高卒ルーキーに注意を払っていた。

阪神井上広大(2020年3月20日撮影)
阪神井上広大(2020年3月20日撮影)

「前の日のホームラン、見たしね。強く振れる印象」。阪神の18歳スラッガー井上広大を評したのは5月に42歳を迎える中日山井大介だ。2軍戦が行われたナゴヤ球場。バックネット裏の客席で、笠原の速球をとらえ、ピンポン球のように左翼へ消えるアーチを見届けていた。

翌3月21日に初対戦。19年目の技術で気持ちよく振らせず、若さを封じ込めにかかる。2回。2ボールからスライダー、カーブをポンポンと外角へ配し、見逃しストライクだ。落ちる球に空を切る。3回は外角低めスライダーをとらえられない。小熊、又吉にも惑わされた。ノーステップで打つなど工夫したが、4打席連続の空振り三振だった。

昨年、夏の甲子園でアーチを懸けるなど、履正社を優勝に導いた高校通算49本塁打の好打者だ。野球人生で、なかなかない屈辱だろう。一夜明け、2軍監督の平田勝男が井上に話しかけた。「三振していいから、自分のスイングで思い切って振れ」。8日の1軍のオープン戦巨人戦で左越え適時二塁打を放っても、2軍実戦でアーチ4発を量産しても「現在地」を見失わない。平田が「結果が三振でも、まだそこまで求めていない」と話せば、2軍打撃コーチの北川博敏も言う。

「相手もプロの投手でいままで見たことがない球。とにかく『振り感』というか。振っていくことを僕は一番、大事にさせたい。ホームランを打とうが三振しようが、ストライクをしっかり振れる形を作りたい」

豪放な印象が覆されたのは2月の2軍安芸キャンプ中だった。同期ルーキーたちは、いち早く実戦で好結果を残し、かたや井上はオフの故障の影響で練習に明け暮れていた。「試合出たいでしょう」と水を向けると「出たいですけど…」と言いつつ、こう明かした。

「みんな打っても、自分は打てなくてもいいと思っています。もちろん、結果を残さないとダメな世界。でも、自分のスイングをまず1年目にちゃんとしておかないと、2年目、3年目にできなくなる。1年目は三振でも(バットの)先に当たってもいいから、とにかく振る意識をつけたい」

18歳の口から出たのは威勢のいいセリフではなく、地に足がついたビジョンだった。「無理に右に打つんじゃなく、右中間に、センターにという意識でバットを出せば、絶対にボールがかんでくる。いい打球が飛ぶんじゃないかな」と続けた。ティー打撃を見て、ふと気づいた。右肘を畳むようにして、バットを出していた。大振りせず、体に巻きつくようなスイングだ。

果てなき夢がある。「右打者は誰でも映像を見ますね。鈴木誠也さん。岡本和真さん。全然、タイプは違うんですけど、山川穂高さん。どういう練習しているのか、すごく気になりますね」。球界を席巻する右打ちの大砲に憧れる。あの長嶋茂雄だってデビュー戦で4打席連続空振り三振だ。

井上は4三振した試合後「自分のスイングを心掛けたい」と言った。その翌日だ。第1打席は内角速球にどん詰まりの投ゴロ。初球だった。振って振って、振って学ぶ。信念のフルスイングを貫く。【酒井俊作】(敬称略)

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