ソフトバンク周東佑京内野手(24)の父孝宜さん(55)は、自分の息子が「ビッグ」になったことに驚いている。

今季は50盗塁をマークし、育成出身初の盗塁王に輝き、リーグ優勝と日本一を手にした。「自分の息子がこの中でプレーしていることがまだ信じられないんです」。運送業を営み、自らトラックのハンドルを握る日々。「(コロナ禍で)球場にもいけないのでずっとテレビの前で普通のファンとして見ていました」。群馬・太田市の自宅でテレビ観戦しながらわが子の姿に目を細めた。

名前の「佑京(うきょう)」には孝宜さんの思いが込められていた。90年代、F1レーサーとして活躍した片山右京(57)から取った。

「片山は単身英国に渡ってF3から自分の力でF1へとステップアップしていった。単身で渡ったのが格好いい。私は群馬から離れられなかったので、自分の息子には自分の力でのし上がってほしいという気持ちがあって付けました。でも今や『スピードスター』ですよね。由来が『カミカゼ・ウキョウ』ですから。今思うと不思議だなと」

名字との相性上、字画が足りず「右」ににんべんをつけた。「私の名前は、祖父が地元で有名な神社から付けてもらった。同じ字画にしたかった」。父の思いを実現するように、周東は群馬から“単身”北海道・網走市に渡り、東農大北海道オホーツクで「武者修行」した。ソフトバンクに育成選手で入団し、今度は九州で盗塁王、日本一とのし上がった。片山のようなサクセスストーリーだ。「野球は塁間など世界共通。せっかくなら世界一になってもらいたい」。15画に込めた願い。ウキョウの名がいつの日か日本を飛び出し、世界中に広まることを期待していた。【ソフトバンク担当 浦田由紀夫】