林晃汰
林晃汰

広島のチーム作りには定評がある。自前で育てた選手で見事リーグ3連覇を継続中で今季もV4目指しペナントレースに突入した。今季の1軍オーダーにトレードで獲得した選手はいない。巨人にFAで移籍した丸佳浩外野手の人的補償で長野久義外野手が加わったが、代打出場はあったものの開幕3連戦のスタメン出場はなかった。こうした広島の育成環境に思いをめぐらせ、ウエスタン・リーグ公式戦、阪神-広島の取材で鳴尾浜球場に足を運んだ。

3連戦の初戦、広島のスターティングメンバーを見て今後が楽しみになった。なんと、ルーキー4人の名前が連なっている。早速2019年の選手名鑑を開いてみると、ここ2、3年では珍しく新人野手6名を獲得していた。

選手名を挙げてみる。申し分ない素材のドラフト1位小園海斗内野手(18=報徳学園)を筆頭に、同3位林晃汰内野手(18=智弁和歌山)、同4位中神拓都内野手(18=市岐阜商)、同6位正随優弥外野手(22=亜大)、同7位羽月隆太郎内野手(18=神村学園)の5名に育成枠で大盛穂外野手(22=静岡産大)が揃って入団。次世代を担う面々と見たが……。

あの広島だ。注目は「どう育て、どう育つか」にある。もちろん全選手が揃って同じように成長するわけではない。レギュラーを張ってバリバリ桧(ひのき)舞台で活躍する選手。特長を生かして貴重な戦力として働く人。中には志半ばでユニホームを脱がざるを得なくなる選手。人生様々で先の事までは分からないが、いずれにせよ大きな夢を抱いて飛び込んだ世界だ。各自良くも悪くも悔いを残さないよう体当たりしてほしいね。「そうですねえ、久しぶりに若い野手が入ってきたので楽しみにしています」は水本勝己2軍監督である。

中でも、今回の3連戦でどっしり“4番”に座っていた有望株がいた。先輩や外国人を押しのけての打線の軸は、将来を見据えた育成法の一つだろう。林である。同監督は「様子を見ながらですが、しばらくはこの打順でと思っています」と語っていたが、甲子園で逆方向(レフト)にホームランを放つパワーの持ち主。バットの振りは鋭く、ヘッドスピードは速い。体格も申し分ない。これから厳しい広島流で鍛えていくなら、よりパワーはつく。本人は「まだ、全然プロの水には慣れていません。でも、こうして毎試合使っていただいていますし、いろんな体験ができて、この世界で必要なプレーが一つ一つ吸収できますので感謝しています。まだ、やることはいっぱいあります。練習あるのみです」。3連戦で放ったヒットは初戦の中前打1本のみだったが、その1本は1軍でも実績ある秋山から。良い経験をしている。

公式戦に突入して半月。まだ成績を重視する段階ではない。ドラ4の中神も結果は出せなかったが「やっぱりこうしてゲームに出ていると、いろいろな場面の体験ができます。実戦で今後に必要なプレーを吸収できますのでありがたいです。でも、まだまだこれからです」。がっしりした体格だ。動きからして身体能力は高いと見た。強肩、俊足、目標はトリプル3という。確かに実戦から得るものは多い。出場機会を優先させ小園も31日に1軍選手登録を抹消し2軍で実戦経験を積ませる育成方針に切り替えたようだ。

水本監督「楽しみな反面、思うようにならなくてイライラすることも多いと思いますが、若い子を育てていく以上、こちらが我慢しないといけないことですから。みんなそれぞれいいものを持っていますしやり甲斐があります。今のうちに何とか育てたいですね」。チームが安定している今から後継者を育てておけば戦力が途切れることはない。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

小園海斗
小園海斗