オンラインという異例の形で行われた阪神の「ファン感謝デー」。矢野監督は来季へのキャッチフレーズとして「挑・超・頂-挑む 超える 頂へ-」を掲げました。

なんだか関西人が人に話し掛けるときの「ちょうちょう聞いてえや~」という言葉のような気もしますし、広島カープ風のムードも漂わなくはない。それはともかくユニークなフレーズの下、新たな気持ちで3年目の戦いへ挑みます。

新たなことと言えば阪神はキャプテンが代わりました。今季までの糸原に代わって来季は大山が務めます。「4番三塁」を死守しながらチームを引っ張るキャプテンも兼務。いよいよ中心選手としての存在感が期待されるところです。

この「キャプテン」ということで少し思い出があります。プロ野球のキャプテン制というのは以前からあったようです。胸にハッキリと「C」マークをつけるようになったのは2000年代に入ってからではと記憶していますが…。

さて闘将・星野仙一が阪神監督に就任して2年目の03年です。シーズン前に星野監督と、私を含めたいわゆる虎番キャップの連中がお茶を飲んでいるときに出た話題でした。

ある記者が「阪神はキャプテン制を敷かないんですか?」と質問したのです。そんな話が出る背景にはやはり球界にそんなムードがあったということでしょう。その問いに闘将は何と答えたか。

「キャプテン? 何やそれ。キャプテンはオレやないか!」

一刀両断というか、くだらないことを聞くなとばかりに言い切りました。星野監督の頭の中にはチームを統率し、引っ張っていくのは自分の仕事、それ以外はないという考えだったのでしょう。そこには「末端まで自分が責任を取る」という闘将の覚悟もあったような気もします。

現在でもキャプテン制を敷いていない球団はあります。その制度がいい、良くないというのではありません。大事なのは投手から野手、裏方に至るまで指揮官自身がすべて責任をもって戦う、その意気込みと覚悟ということではないでしょうか。勝負の3年目に期待したいところです。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)