<みやざきフェニックス・リーグ:西武2-1阪神>◇14日◇アイビー

西武の21年の育成ドラフト3位、プロ2年目左腕・菅井信也投手(20=山本学園)が阪神戦に先発。リーグ優勝を決めた阪神の1軍相手に6回を4安打1失点と好投した。大山のソロ1点に抑えたピッチングは、今後に期待を抱かせる内容だった。

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まず最初に明確にしておきたい。私が現地で試合を見た範囲では、阪神の公式戦最終戦から10日ほど間が空いており、いくら優勝メンバーとは言え、ベストコンディションとは言えなかった。

それを踏まえ、さらに付け加えるなら、この試合に対する阪神の位置付けは勝負でも内容でもない。しっかり実戦に入る準備をする段階だと理解している。打った、打たないは関係なく、CSファイナルステージに照準を合わせた練習の一環ということだろう。

対して西武の選手は全員が必死だった。阪神が必死ではないということではなく、結果を求めない阪神とは違い、西武は結果も内容も求められた。その中で先発した菅井のピッチングは目にとまるものがあった。

腕の振りが遅れて出てくる印象を受けた。それは何が起因しているか考えた時、右肩がバッターに対して開くのが早く感じた。だが、肩の開きが早いのは、ボールの球筋が見やすくなり、打ちやすくなるのだが、菅井の場合は右肩の開きの早さが弱点にならない特質がある。

それは、開きは早いものの、左腕が遅れて出てくる感じがあるために、微妙に打者のタイミングがずれてしまうことだろう。それを意図してやっているのか、もともとそうしたフォームだったのか。初見の阪神打線が打ちあぐねたのは、この左腕が遅れて出てくるフォームだったと感じた。

MAXは144。これが常時144のスピードが出るようになるといい。あと4~5キロほど球速アップすると、打者は差し込まれるようになる。一種独特のフォームがあるということは、バッティングの根幹となるタイミングを外しやすくなるということだ。

またカーブ、スライダー、チェンジアップを投げていたが、チェンジアップが特に光った。左バッターの内角に投げる制球があり、右バッターの外角と合わせ、ゾーンを広く使える。

これも非常にいい。左ピッチャーがチェンジアップを使う時、右打者の外角へ決めることが多いが、左打者の内角を突けることは武器になる。

先発菅井を筆頭に、この日投げた西武のピッチャーは育成が顔をそろえたことに、とてもおもしろい組み合わせだなと感じた。方やリーグは違えど、優勝メンバー。そして、一方は育成の投手陣。

冒頭でも触れたように、阪神は勝ち負けではなく、調整段階だが、優勝メンバーと対戦できた西武投手陣は千載一遇の思いで投げたことだろう。それこそ、こんな好機はなく、必死な思いで自分の持ち球を懸命にアピールしたと思う。

試合は西武が勝利した。だから何だと言われるかもしれないが、それぞれの事情は異なっても、若いピッチャーはどんな瞬間に飛躍するきっかけがあるか分からない。

育成であれば、常にこの秋口は来季の契約へ不安に駆られる選手は多い。支配下登録を目指し、常にアピールをし続ける育成選手にとって、この日の勝利は大きな自信になる。

フェニックスリーグだろうが、相手が久しぶりの実戦だろうが、1軍の主軸を抑えた事実は、育成選手にとってこの上ない励みになる。

菅井をはじめとしたこの日登板した育成契約のピッチャーには、成長へのヒントをつかんだ記念すべき試合になったと、後日思い返すようにしてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)