札幌大谷に敗れ応援団にあいさつした米子東ナインはベンチ前に整列しグラウンドへ一礼する(撮影・加藤哉)
札幌大谷に敗れ応援団にあいさつした米子東ナインはベンチ前に整列しグラウンドへ一礼する(撮影・加藤哉)

勝利はつかめなかったが、16歳の球児が夢に向かって大きな経験を積んだ。米子東(鳥取)・土岐尚史外野手(2年)。将来の夢は「野球人口の拡大に携わる」ことだ。抱き始めたのは高校入学後。きっかけは昨年の2、3年生が「野球人口の拡大」をテーマにした論文を鳥取県の高野連に提出したことで始まった学童保育施設での野球教室だった。

1、2カ月に1度のペースで野球を模した遊びで、子どもたちと交流している。ティーバッティングのような形にしてボールを打たせてあげたり、塁に進む時は部員が誘導係になる。「活動をしているうちにいいなと思って。最初は難しかったけど、目線を合わせたり、インパクトの時に怖がらせないように優しく接してあげれば親しみを持ってくれる」。定期的に通い続けていると「またやりたい」と言っている子がいるとも知った。

チームは昨秋、16人と少人数ながら、中国大会準優勝の結果を残し、夢舞台にたどりついた。センバツ出場決定後、通う保育施設を訪れると、応援メッセージであふれた寄せ書きをプレゼントされたという。「うれしかった。楽しさを知ってほしい」。24日、米子東は1回戦で札幌大谷(北海道)に敗れた。だが、悲嘆の色はない。あこがれ続けてきた景色を見ることができた。

地元に帰ると伝えたい思いがある。「甲子園は観客の人がすごく歓声をあげてくれる。甲子園は楽しいところと伝えたい」。それと「応援してくれてありがとう。これからも頑張る」。試合後、感謝の気持ちを語るとともに、夏への鍛錬を誓っていた。

数年後、彼が教えた子どもたちが、聖地を踏むときがくるかもしれない。今センバツは平成最後の甲子園。その瞬間が新たな時代で訪れることを願っている。【望月千草】

札幌大谷に敗れ応援団にあいさつした米子東ナインはベンチへ引き揚げる(撮影・加藤哉)
札幌大谷に敗れ応援団にあいさつした米子東ナインはベンチへ引き揚げる(撮影・加藤哉)