5日に行われた高校野球神奈川大会の開会式で、県高野連の布施和久会長(59)が壇上でのあいさつを行った。
茅ケ崎北陵の校長を務める布施氏は、本年度から高野連会長に就任。3分半の初めてのあいさつでの「頑張ってね」の呼びかけが、168チームの高校生たちに響いた。
高校生は誰も生まれていないから、知るよしもない。布施氏は21年前、ドラフト候補投手とともに熱く戦っていた。
03年、布施氏が野球部長を務める城郷(しろさと)高校が注目された。140キロ台中盤の速球を誇る吉田幸央投手(その後ヤクルトへ入団)がいた。ただのドラフト候補ではなく、東海大相模から1年時に転校。当時はかなり珍しいその経緯が注目された。
吉田が新しい環境にすぐなじめたのも、当時の布施部長の優しさが大きかった。優しくて、根は熱い。夏の大会で敗れると「みんな、頑張ったよ!! 頑張ったじゃないか!!」と声を張って、涙する教え子たちをストレートに激励した。その後、他校への転任が決定。吉田らも含めた多くのOBで大々的な送別会が開催されるほど愛されていた。
「この先、いろいろな教育の現場で学ばせていただける機会があればいいなと思っています」
そう話していた布施部長は歳月を重ねて校長職になり、全国屈指の激戦区の連盟トップにまでなった。当時より、高校生を取り巻く環境はもっと複雑になっている。この日のあいさつにも思いがにじむ。
「人には役割があります。先発投手、リリーフ、レギュラー、代打、ベンチのムードメーカー、マネジャー、スタンドで応援する選手、それぞれの役割があります。役割に差はありません。思いは皆、同じです。人にはそれぞれ、発表の形があります。大切なのは、自分の役割をしっかりと果たし、仲間と一緒に夏の大会の発表を最後までやり遂げる、ということです」
布施“先生”らしく、続けた。
「私たちはその皆さんの姿を見ています。心から応援しています。高校野球にかけた青春の炎、精いっぱい燃やしてください」
そして言った。
「頑張ってね」
大人たちは高校生たちが思うよりずっと、高校生1人1人を見ている。【金子真仁】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)




