コロナ禍の現在、阪神は「リモート取材」だ。多くの会社員がやっているテレワークのシステムを使用。この4月から広報課長になったばかりの入社9年目、矢浪峻介(31)が先頭に立って情報を届けている。

前日21日はボーアの取材をしていた。ボーアはイチローに師事していることで有名。そして矢浪はイチローとボーアがともに出場していたマーリンズの試合をマイアミで見ている。

甲子園球場事業部に配属されていた17年。まとまった休みが取れた5月、かねて見学したいと思っていた大リーグ視察に出掛けた。もちろん自腹である。東京出身、都立城東高では球児だった矢浪は子どものころからのイチロー・ファンでもあった。

17年5月8、9日のカージナルス戦を見た。8日、イチローは代打で安打をマーク。9日はスタメンだったイエリッチが退場になり、その後にイチローが出場するというめずらしい場面にも遭遇している。

マーリンズのクリーンアップは3番オズナ、4番スタントン、そして5番がボーアだった。ちなみにカージナルスには元阪神の呉昇桓もいた。マーリンズでは田沢も投げていた。

「ボクが見た試合でイチローさんといっしょに試合に出ていた選手が阪神に来るとは…」。ボーアが来日した当時、感慨深い思いを隠さず、矢浪はいろいろな話をしてくれた。

文武両道の城東高を出た後、1浪で慶大に入学。就職先は大好きな野球関係を選択したかった。当時、正社員で入社し、球団に携われる可能性を感じたのは阪神だけ。4年生だった11年の就職活動で迷わず、阪神電鉄を受けた。

都内で行われた2次面接は3月11日だった。足立区にある実家から午前中に別の会社を訪問。その後に東日本大震災が発生している。都内も公共交通機関が止まり、有楽町の阪神東京事務所での面接には徒歩で向かったという。

あれから9年。無事に入社し、希望していた野球ビジネスの最前線にいる現在、前代未聞のコロナ禍が発生した。そんな中、広報としての奮闘が続く。

「同い年でもあるし、ボーア選手には活躍してほしいですね。それ以前に開幕してほしいですけど」。矢浪は祈るような思いでいる。ボーアも虎党も野球ファンもそれは同じだ。そしてもちろん、誰にも負けない野球好きのイチローも同じ思いだろう。(敬称略)

阪神矢浪広報
阪神矢浪広報
阪神矢浪広報
阪神矢浪広報