代打満塁弾の中谷将大あたりが9回表に登板すれば面白かったが、さすがにそれはなかった。「伝統の一戦」での野手登板。敵将・原辰徳は「あれが最善策」という趣旨の話をしたようだ。野手の登板はルール上問題ないが、やはり大胆なことだとは思う。

さまざまな意見が出るだろう。賛否は別に、個人的に言わせてもらえれば原巨人にとって、この試合はそれぐらいの意味合いだったということではないか。

この3連戦、巨人は1つ勝てば、まず安泰だったはずだ。それが連勝スタート。3戦目で高橋遥人に好投され、大差がつけば、こういう投手温存策を取りたくなるのかもしれない。

阪神が巨人と競っており、この3連戦で順位が入れ替わる、巨人の足元が揺らぐ可能性がある状況なら、大差がついてもこういう策は取っていないと思う。残念ながら、今季ここまで、両軍にはかなりの差があるということだ。

巨人に比べ、打てない、守れないなど多くの要素で負けている阪神、四球もその1つだ。試合前まで阪神が巨人投手陣から選んだ四球は「15」。巨人のそれは対阪神で「23」。8つの差があった。

四球と言えば思い出すのは藤浪晋太郎だ。以前に投手の立場から四球がなぜダメなのかを説明した。

「相手に打たせればひょっとして野手がファインプレーでアウトにしてくれるかもしれません。四球はタダで相手に塁を与えてしまう。だからダメなんです」

前日5日、藤浪がよかったのは8回で1四球だった点だ。制球難と戦い、立ち直ってきている。この日の高橋も11三振を取りながら1四球だったのは立派だ。

そして梅野隆太郎だ。この試合、今季初となる1試合3四球を選んだ。試合が決まっていた8回はともかく、4回に選んだ四球はメルセデスが崩れるキッカケになった。選球眼でプレッシャーをかけた。これで今季選んだ四球は「21」でチーム・トップだ。高打率の理由はここにもある。

安打同様、四球も武器ということだ。初球から打つスタイルもいいが相手の状況次第で冷静になることも必要だろう。

2週間後には東京ドームで巨人戦だ。阪神が次にやるべきことは何か。毎試合、巨人の野手が登板せざるを得ないような展開にすることだ。打って、歩いて、選んで、また打って。それだろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)