大ピンチの湯浅京己に「楽しめ」と言ったのか。マウンドまで出向いて。すごいな。初めて書くけれどこれが「矢野マジック」なのかもしれない。しびれた。こんな試合ができるのか。ヒヤヒヤ。ギリギリ。そして勝ち切った。これは次のヤクルト戦にも、来季に向けても大きな勝利だろう。
「阪神の現在地」。プラス面も、そうでない面でもそう言いたくなる試合だった。序盤、目立ったのは守備のバタバタだ。1回に三塁・佐藤輝明が一塁へ悪送球。3回には右翼・大山悠輔が楠本泰史の打球をファンブルした。くしくもマルチ・ポジションをやっている2人の主軸打者である。
さらには3回、後ろにそらさないことでは右に出る者のいない捕手・梅野隆太郎がそらすバッテリーミスまで出た(記録は才木浩人の暴投)。これは勝てない。正直、そう思った。
しかし、ここからチーム最大の強みを見せつける。2点目を暴投で失い、ダメ押し点を取られそうな1死一、三塁の危機だ。ここで2番手・浜地真澄が牧秀悟を二塁併殺に打ち取ってしのぐ。そこから救援陣が奮起した。
ブルペンをあずかる投手コーチ・金村暁が見極め、岩貞祐太、西純矢と繰り出す投手たちがDeNA打線を切っていく。最後は「こっちが故障すると心配するほどの投げたがり」(金村)と言う湯浅がイニングまたぎ。そして最後、矢野の「楽しめ」が出たのだ。
打線も象徴的だった。流れを変える1発を4回に放った佐藤輝はさすがの長距離砲の姿を見せた。しかし逆転成功の6回、口火を切った北條史也、決勝打の原口文仁は今季はそれぞれ32試合、33試合しか出場していない、いわば伏兵。「全員野球」の成果とも言えるが主砲・大山は3試合で無安打と「打つべき人が打った」とはなかなか言いにくい展開だった。
投手はいい。守備はまだまだ。さらに打撃も。繰り返すが4季を戦い、培ってきた矢野阪神の現状が出た試合だろう。采配を含めた矢野の思い切りがもっと早く出ていれば、とは思うが、それも短期決戦ならではなのかという気もする。
さあ、この流れがどう出るか。19年は今回と同じく横浜で○●○でのファースト・ステージ突破。矢野は「幸運の赤パンツ」をはいて試合に臨んだことを隠さなかった。なんだかんだ言いながら虎党はもう少し、野球を楽しめる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




