早い。早過ぎる。そんな思いが充満している阪神タイガースだ。先発・西勇輝が巨人・山崎伊織と投げ合った結果は1-0での勝利。「きょうは何もしてないな。何もせんと勝つのが一番エエわな。ラクやし」。指揮官・岡田彰布もそう言ったゲームは試合時間2時間6分。9回としては今季最短だ。ここに来て「アレ」への流れが一気に加速してきた。
試合前の甲子園。あるOBと会話していると「どうも!」と声をかけられる。「はい…?」と顔を向けると「世界のケン・ワタナベ」こと俳優の渡辺謙だった。ビックリしながら「あら! こんにちは!」と、かろうじてあいさつする。
ついに「ケン・ワタナベ」からあいさつしてもらえるような身分になったのか…と感慨にふけりたいところだが、もちろん、違う。いつ来ても甲子園にいるので、向こうからすれば「また、おるな、こいつ」というようなものだ。
「神宮(22、23日)かなぐらいのつもりでチケット取ってたんですけど。早いですね。今回の甲子園観戦は明日(13日)までです」。阪神勝利後に広島が負け「M3」となったがアレ達成の最短14日は変わらない。その日程なら指揮官・岡田彰布の胴上げ目撃は不可能ではないか?
それを聞くと渡辺は笑顔で言った。「いやいや。そういうのはいいんですよ。なんていうかね。今回はプレッシャーがかかった選手たちの顔を見るだけで十分です」。実にさわやかな様子である。
そこで「でもみんな、プレッシャーかかっているようには見えませんけど?」と余計なことを言ってしまう。すると「そうですよね!」と大笑い。虎党の幸せな時間が流れていた。
とにかく早い。球団関係者も同じだ。「うれしいんですけど予想よりも早くて。準備の時間が足りないんですよ…」。なんとも言えない表情でそう話す。その気持ちは分かる。こちら、つまり虎番記者たちも「アレ紙面」のために、日夜、奮闘中。悩みは「時間が足りない」と、こちらもまったく同じである。
ハッキリ言って、ほとんどの人が8月の長期ロードか「勝負の9月」で少しは足踏みするのでは、と予想していた。それを覆すぶっちぎりぶりだ。ホンマにどないしてん。阪神。という感じである。それでもこれを味わえるのは虎党だけ。存分に楽しみたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




