堂々の準優勝だ。創部52年目で初めて決勝に進んだ東海大四(北海道)は、敦賀気比(福井)に競り負け、北海道勢初の優勝はならなかった。エース大沢志意也投手(3年)は、緩急自在に好投したものの、同点の8回に勝ち越しの2ランを許して5安打3失点。1回戦から全5試合に登板した右腕は、1球に泣いた。道勢にとっては63年北海以来、半世紀ぶりの準優勝。夏に再び、頂点を目指す。

 真っすぐ前をにらみつけ、悔しさをのみ込んだ。東海大四のエース大沢は「みんなに申し訳ない気持ちでいっぱい。あの1球で、流れが全部相手に行ってしまった」。涙は、ない。ただ、甲子園で投げた540球目を、しきりに悔やんだ。

 序盤から、相手エース平沼と白熱した投手戦を繰り広げた。1回、2安打で同点とされたが、2回以降は緩急自在に強力打線を翻弄(ほんろう)した。4回無死満塁のピンチでは、縦に落ちるスライダーで2者連続三振を奪う圧巻の投球。しかし8回、準決勝の大阪桐蔭戦で史上初の2打席連続満塁弾を放った松本に高めに浮いたスライダーを左翼席へ運ばれ、勝ち越しを許した。「打たれたくない場面で、少し置きに行ってしまった。自分の失投です」。ベンチに戻る際、帽子を取り、味方ベンチに頭を下げた。

 グラブには一番好きな「志」の刺しゅうが入っている。「志意也」の名には「志高く、意志の強い、優しい子になるよう3つの意味を込めました」と母知佳さん(44)。足の悪い祖母恵さん(82)と天塩町で同居していた際には、いつも肩を貸してトイレへ連れて行くなどしていた、心優しき右腕は「1球の怖さが分かった」と唇をかんだ。

 1回戦から全5試合で4完投。失点はわずか6だった。冬場、磨きをかけた外角低めの直球でチームを道勢52年ぶりの準優勝に導いた背番号1は「この経験を生かして、また夏に帰ってきたい」。ようやく雪解けが始まった北海道へ戻り、最後の夏へ向けてスタートを切る。【中島宙恵】