今夏の甲子園で準優勝した金足農が横手に3-5で敗れ、来春のセンバツ出場が絶望となった。大黒柱の吉田輝星投手(3年)から背番号1を譲り受けた新エースの関悠人投手(2年)が先発し、2回までに3失点。以降は立ち直って8回まで無失点と粘ったが、3-3の9回にスクイズと3安打を集中され、2点を勝ち越された。今春の地区大会から始まった県内公式戦の連勝は14でストップ。甲子園決勝後から短い時間で新チームを始動させたが、東北大会にすら届かなかった。

たった4球で勝ち越された。新エースの関が、最後まで踏ん張り切れなかった。同点の9回1死から相手1番に安打を許すと、続く2番の初球に二盗、2球目に三盗で傷口を広げた。カウント2-0の3球目、無警戒で投げた棒球を簡単に転がされ、決勝スクイズを決められた。「盗塁はモーションを盗まれていた。2番は、データからバント、スクイズはないと思っていた。油断した。悔しい」。涙は流さず、ぼうぜんと肩を落とした。

マウンドに立っていたのは、巧みな投球術でピンチを脱した吉田ではなく、公式戦登板2戦目の関。これが現実だった。吉田から背番号1を譲り受けた時は「他のことは何も考えられなかった。責任を感じた」。3年生との紅白戦では「ワンバンでもいいので低めに投げろ」と助言をもらっていたが、2回までの3失点はすべて高めに浮いた直球が絡んでいた。この日、授業があって観戦に来られなかった吉田と対面したら、と問われると「泣いちゃうかもしれません」と下を向いた。

課題は投手陣だけではなかった。7回には、甲子園で決まっていた必殺スクイズを失敗。8回は満塁機で無得点。試合後、中泉一豊監督(45)は開口一番「残念です」と言葉を絞り出し、「今の力はここまでです。まだまだこれから」と本音を漏らした。

旧チームは昨秋県8強敗退を糧に、冬場に壮絶な練習を自ら課して春以降の爆発的な飛躍につなげた。来夏に向けて、中泉監督は「今できないことの確率を上げて、気持ちの面でも鍛えていきます」と宣言。関も「他のチームの2倍も3倍も練習して勝ちたい。吉田さんを超える気持ちでやらないと」と気丈に前を向いた。実りの冬を越え、春から大輪の花を咲かせてみせる。【高橋洋平】