昨夏の西愛知代表で、今年も有力候補の愛工大名電が春優勝の難敵を撃破した9回に一挙5点を奪って逆転した。

0-2の9回。連打で無死二、三塁とし、杉山弘将内野手(3年)の中前打で同点。さらに無死一、二塁から田村俊介投手(1年)の打球は二塁前へ。併殺かと思われたが遊撃手が一塁に悪送球。一塁にヘッドスライディングした1年生左腕は「気持ちが出ました。絶対にセーフになってやると」。思わぬ形で勝ち越しの1点が入った。

稲生(いのう)賢二外野手(3年)と牛島凜人(りんどう)外野手(3年)の連続適時打でもう2点追加。ユニホームを泥だらけにした田村が裏のピンチもしのいで2失点完投した。

1年生ながら名門の背番号1をつける田村は今大会初登板。先発して2~3回に4者連続を含む10奪三振。練習試合では7回が最長で、9回完投は初めて。初めての夏で、最初の大一番の先発という重責だった。「マウンドでも全然雰囲気が違った。緊張したけど先輩方が『いつもの調子で』と言ってくれて楽になりました。今日はコントロールを意識しようと思った」とホッとした表情。

2日間、雨で順延されていた大一番。ただでさえ「夏デビュー」の田村も心身の調整に苦労した。ブルペンでも本調子ではなかったが、丁寧な投球でロースコアに抑え、逆転劇を呼び込んだ。1年生左腕のゲームメーク術に倉野光生監督(60)は「安定感があった。スピードを抑えて制球を重視できる。そういうテクニックを持っている」とほめたたえた。