“らしさ”の詰まった快進撃だった。市川は23年ぶりのベスト8進出を果たしたが、準々決勝で惜しくも敗れた。

躍進を支えたのは進学校ならではの指導方針だ。市川高校が掲げる「第三教育」。親と教師に受ける教育のほかに、自分で自身を教育するというものだ。

平日の練習は2時間。土曜日も授業があるため、試合ができるのは日曜、祝日だけ。限られた機会の中で、自分たちにできることを考えた。

井本陽監督(40)は「(今年のチームは)野球を知らなすぎた」と言うが、練習試合ではオーダー、選手起用、サインすべてを選手に任せてみた。考える力がある選手たちは、試合中に修正する能力にたけていた。

準々決勝でも力は十分に発揮された。3回に、記録上は安打になったものの、依田怜樹遊撃手(3年)が打球をはじいた。井本監督は「守りに入って逃げ腰だった」と評したが、以降は果敢に前で打球をさばいた。

エース加來壮多郎投手(3年)は、序盤にコントロールが乱れ9安打3失点を喫したが、5回以降は2安打無失点。「2年半やってきたことをまとめたピッチングができた。自分がやることをやって打たれた。悔いはない」とすがすがしかった。

日々の練習で積み上げた成果のベスト8。選手たちは堂々と胸を張った。井本監督も「選手たちが前向きにやらなければ、ここまで来ていない。ありがとう」とたたえた。「今回得たものを、社会に出てどう糧にするか。1つの通過点が終わったが、新たな方向に成長してほしい」と優しいまなざしでナインを見つめた。