十勝晴れの空の下で白樺学園ナインの弾むような声が響き渡った。2日、芽室町内の同校グラウンドで4月19日以来44日ぶりに全体での練習が再開。夕方には中止になった夏の選手権大会に代わる北海道独自の代替大会が決定。主将の業天汰成捕手(3年)は「いろいろな人への感謝を忘れずに、大会では優勝を目標に頑張りたい」と力を込めた。

初出場の予定だったセンバツに続いて、夏の大会も中止。練習再開もままならず、一時は目標を見失ったこともあった。それでも周囲が北海道独自の大会開催に向けて動いていることも知っていた。だからこそ「目的は勝っても負けても良い形で終わること」と業天。練習開始前の3年生16人だけのミーティングでは、活動する目的を確認し合った。戸出直樹監督(44)は「ゆるい雰囲気にはさせたくない。メリハリをつけさせたかった」。例年通り秋には新チームが発足する。指揮官の一抹の不安は杞憂(きゆう)に終わり、3年生からは前向きで力強い言葉が返ってきた。

サプライズもあった。ミーティング後には同監督から06年夏の甲子園に初出場した際の「甲子園の土」を聖地に立つはずだった3年生1人1人に手渡された。前日1日に約1時間かけて砂を小瓶に移したという同監督は「春は初出場で歴史をつくるはずだった。甲子園の土を見れば、目標にしてやってきた日々を生徒たちが思い出せると思った」と親心を見せた。

十勝地区では7月11日以降の代替大会開幕を見据える。18人の登録メンバーについて「3年生16人全員と残りは選手たちに決めさせる」と同監督。苦難を乗り越えてきた選手たちの自主性を信じる。同校では新型コロナウイルスの感染状況を鑑みながら、6、7日には紅白戦を始め、今月下旬以降には対外試合で実戦感覚を取り戻していく予定だ。

代替大会は保護者の観戦も認められる方針で、3年生にとっては高校野球の集大成を披露する場にもなる。エース右腕の片山楽生(3年)は「恩返しのプレーをしたい」と話す。自粛期間中には父宣孝さんが冬場に作った傾斜のついた平均台型の装置を使ってネットスローを続けフォーム改善を図り、直球の最速は昨秋から5キロアップの147キロまで伸びた。今秋にはプロ志望届け提出を予定する身長178センチ右腕は「パフォーマンスを出し切りたい」と最後の舞台に全力投球を誓った。【浅水友輝】