大船渡の「打倒花巻東」の目標は、戦わずして消えた。花巻東に大敗した昨夏決勝、秋の準々決勝でともに登板したエース左腕・前川真斗(3年)が先発し、5回6失点(自責5)。初回に2ランを喫するなど、得意の緩急が通じず9安打を浴びた。「先輩の思いもあったので、最後は勝って終わりたかったので悔しい。秋にも本塁打を打たれていた打者だったので、意識が過剰になってしまった」。腕を振り切れなかったチェンジアップを痛打されたことを悔いたが、現チーム公式戦全7戦すべてに登板出来たことは誇った。

佐々木朗希投手(18=ロッテ)を擁して準優勝したチームと比較された1年だった。コロナ禍による自粛期間中は、退部を検討する3年生部員もいるなど崩壊寸前だった時期もあった。チームを立て直したのは昨夏の主力でもあった吉田昂生主将(3年)。「個性がある仲間で大変だったけど、背中で引っ張ろうとやってきた。今までありがとうという思い。大船渡高校を選んで良かった」。涙を流しながらも胸を張った。

6回には代打の大和田琉人内野手(3年)が左前適時打を放つなど4安打で2点を返す意地も見せた。国保陽平監督(33)も「去年のチームと比べられて、つらかったことも多いと思う。3年生の頑張りが見えた試合」と選手をたたえた。【鎌田直秀】