<高校野球神奈川大会:桐光学園11-1城山>◇7日◇2回戦◇サーティーフォー相模原球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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城山(神奈川)の背番号21、山内拓投手(3年)は、病と闘いながら最後の夏を迎えた。強豪・桐光学園に5回コールド負けだったが、3回に1点を返すなど意地をみせた。その原動力となったのは、山内の力強い声だった。

19年夏、新チームが始動して2日後にメニエール病を患った。めまいや耳鳴りなどに悩まされてきた。一時は回復したが、今年2月にはパニック障がいも発症。野球に打ち込めない日々が続いた。「練習に出られなかった分、声を出して、みんなに届くようにしました」。出場することはかなわなかったが、できることはある。大きな声を張り続けた。

「最初はみんな緊張していて、自分が声をかけてあげなきゃと思った」と初回から仲間を鼓舞し続けた。少しでも仲間の力になれるように…。全員で戦い抜いたが、シード校に及ばず2回戦で敗れた。「迷惑ばかりかけた。でも最後は役に立てたかな。自分にとっては最高の終わり方だったと思います」。目元を拭い、最後はあの声と同じように、力強く、胸を張った。【湯本勝大】