父を超える舞台は整った。秋田商の阿部大和外野手(3年)が、秋田南を突き放す貴重な一打を放った。5-5の8回2死一、二塁で、左越えに決勝の2点適時二塁打。チームを2年連続の決勝進出に導いた。甲子園出場が決まる大一番は、21日。相手は父伸吾さん(46)が95年夏に選手として甲子園に出場した金足農だ。「9番右翼」の伏兵が、これ以上ない巡り合わせをたぐり寄せた。
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ピンチのようなチャンスで、阿部がシャープにバットを振り抜いた。同点の8回2死一、二塁。白球が左翼手のグラブを越えると、「ランナーが(ベースを)回っているのが見えたので、リードした状況になったことがうれしかった」とかみしめた。無死一、二塁の大チャンスから、犠打失敗に三振で打席が巡ってきた。太田直監督(45)が「0点だったらおそらくひっくり返されてた(勝ち越されていた)でしょうから」と覚悟するほどの場面で、勝負強さを見せた。
指揮官の指令をなんとか体現した。1ボールからフルスイングで真後ろに高く上がるファウル。そこから太田監督は毎球声を張り上げた。「(大きく)振るなって言ってました。自分で決めたがるところに落とし穴があるので、コンパクトスイングのサインを出してました」と“大振り禁止”を発令。それでも阿部は「(監督の)声は聞こえてたんですけど。振り切らないとポップフライになってしまう」と自身の感覚と自問自答した。徐々にバットは水平軌道になり、7球目にライナー性の打球がオレンジ色の金属バットから放たれた。
決勝の相手は金足農。父は「KANANO」のユニホームで、95年夏に聖地の土を踏んだ。自宅ではプロ野球をテレビ観戦しながら「このケースは大和だったらこっちに打つとか、バントだよなとかを教えてくれる。とても頼りにしてます」と一番近い“指導者”でもある。
だが、阿部が選んだのは父の母校ではなく、秋田商だった。理由は「(秋田商が)2015年夏に甲子園出た時に、テレビでずっと見ていて。すごくかっこよくて、自分もいつかここでやりたいなって」と明かす。夢に見た甲子園まであと1つ。相手は金足農。これ以上ない舞台が整った。「父を超えたい。甲子園に行きたい」。「AKISHO」のユニホームで、特別な相手に勝つ。【黒須亮】

