広島大瀬良大地投手(23)がDeNA戦で9回4安打の完投も、1失点で敗戦投手となった。100球で投げきったようにテンポよく、緩急も交えた投球。それでも野球の神様はほほ笑まなかった。打線の援護がないまま迎えた9回に失点。大瀬良は自らを責めた。どんな状況でも謙虚に。やることは変えず、そのときを待ち続ける。
悲劇のヒーローは気丈に振る舞った。大瀬良はベンチ裏に続く階段を上りきると、自ら切り出した。9回2死二塁からDeNA梶谷に浴びた決勝打。カーブが高めに浮いた。「あの1球だけですね」。表情は変わらなかった。打線の援護に恵まれず、逆スミ1で3敗目。やりきれない思いもあるだろう。だが、責任の所在を自らに向けた。投球をこうまとめた。
「9回に点を取られるツメの甘さ。何かが足りないということを、野球の神様に言われている気がする。どんな状況でもゼロを並べていくのが、勝っていく投手だと思うので」
責められる内容ではなかった。序盤から省エネピッチを実行。捕手会沢のミットに、次々とボールが吸い込まれていく。150キロの直球に、カーブ、スライダー、カットボールを交え、緩急自在の投球。大胆かつ繊細にゼロを並べていった。8回終了まで2安打無失点。球数もわずかに85球と、DeNA打線をまったく寄せ付けなかった。
悲劇の9回も、1球に魂を込めた。1死二塁で迎えた倉本を空振り三振に打ち取ると、フォームの勢いそのままにセンター方向を向いてガッツポーズ。「調子自体も悪くなかった」と言うように、打者を見下ろして腕を振った。梶谷に打たれた後は筒香を歩かせ、最後はロペスを遊ゴロに仕留めた。冷静だった。9回の攻撃ではベンチの最前列で声をからし、野間の内野安打では飛び上がって喜んだ。
「どんな状況でもしっかり前を向いて。やることをやりたい。試合は続いていくので」。チームは今季ワーストの借金7となったが、なんとかしようと戦っている。だから大瀬良はいつだって謙虚に腕を振る。こんないかした男を、野球の神様が放っておくはずがない。【池本泰尚】



