8回121球の熱投が逆転勝ちを呼び込んだ。広島福井優也投手(27)が巨人打線を8回6安打1点に抑え、チームの連敗を4で止めた。チームトップに並ぶ9勝目は、自身シーズン最多を更新する白星。チームは08年以来7年ぶりの巨人戦勝ち越しも決めた。今や先発4本柱としてフル回転を期待される右腕の奮闘こそ、崖っぷちに立たされたチームが求める姿だ。

 エルドレッドの打球がセンターバックスクリーンに消えると、広島ナインは総立ちになった。一塁ベンチ前にできた歓喜の列に、勝利の立役者・福井はいなかった。「悔しい気持ちでロッカーにいました。終盤の1失点はチームにとってもでかい先制点だった。チームが勝てたことが良かった」。福井は1人、ロッカー室で逆転弾を見届けた。

 球数が100球を超えて上がった8回に先制を許した。1死一、三塁で井端の左前適時打で均衡を破られた。なおも続いた1死一、二塁は併殺で切り抜けたが、踏ん張り切れなかった自分が許せなかった。前方下1点だけを見つめてベンチに戻った右腕は、グラブをたたきつけると、ロッカー室へ戻る直前にはスコアボードをにらみつけた。

 以前は制球も調子の波も大きかったが、今季は私生活から見直し感情の波を抑えた。半身浴で気持ちを抑え、生活リズムも安定させた。夏場には大好きなコーヒーも利尿作用があるため登板前日から摂取を控えた。今季はマウンド上で、球だけでなく、自分自身もコントロールできている。だからこそ3四球で招いた7回1死満塁も、8回の先制点直後のピンチもしのぐことができた。

 緒方監督は「ナイスゲームでしょう」と連敗を止めた右腕を称賛した。自力優勝消滅の危機を脱しながら、依然として負けられない戦いは続く。先発6番手争いからはい上がり、今や4本柱の一角としてチームトップの9勝を誇る福井の姿に、広島ナインは奮い立たなければいけない。【前原淳】

 ▼広島の巨人戦シーズン勝ち越しは、ブラウン監督時代の08年12勝10敗2分け以来、7年ぶり。新人監督に限ると、阿南準郎監督が率いた86年14勝11敗1分け以来、29年ぶり。