険しい表情を浮かべた阪神マット・マートン外野手(33)の声が試合後の通路に響いた。「…ハードラック。ビッグゾーン」。そのまま訳せば「不運だ。ストライクゾーンが広い」ということ。だが通訳の制止を振り切って「カープの投手のときだけ(ゾーンが)広いんじゃないのか? 同じなのか?」と報道陣に逆質問する様子は言葉以上にイラついていることを示していた。普段は紳士的な態度に終始するマートンが唯一、人格を変えてしまうのが「ストライクゾーン問題」。この日もそれを露呈した。
1回1死二塁で見逃し三振に倒れると、7回2死満塁、絶好の勝ち越し機で広島一岡のカットボールに空振り三振。そのたびに判定に不満そうな表情を浮かべた。延長12回引き分けの試合で6度も回った打席で無安打3三振だ。
これで10日巨人戦からこの日の甲子園3試合で、14打数無安打4三振。安打量産を代名詞とする男から当たりが止まっている。歴史的混セが展開されるシーズンも終盤、優勝争いは本当の土壇場だ。不振のゴメスが5番に降格する中、3番を任されているマートンまでが調子を落とすのは助っ人頼みの打線にあって、深刻としか言いようがない。
「ちょっとストライク、ボールで集中できていない感じがする」。和田監督も心配する。マートンがゾーンに悩むのはこれが初めてではない。何より文句を言っても仕方がないこと。ここまでマートンなりに我慢して、やってきた。ここで切れてしまっては元も子もない。【編集委員・高原寿夫】



