ファンからも、チームメートからも愛された中日小笠原道大内野手(41)が笑顔で現役生活に別れを告げた。試合終了と同時に中日と、古巣巨人の両ベンチから選手が飛び出した。マウンドで主役を取り囲み、自然発生的に胴上げが始まった。両手を広げて5度宙に舞った小笠原は「なかなかそういう経験を出来る人間はいないと思う。幸せだと思った」と粋な計らいに感謝した。

 最後まで全力だった。事実上の引退試合。「任せてくれたので、お願いしますと言いました」と、5番一塁でスタメン出場した。4回の第2打席には2死一、二塁から遊撃への打球で激走。広島前田智徳を抜いて歴代単独26位の通算2120本目の安打をマークした。7回にはマシソンの155キロを左翼線へ。亀井の好捕に阻まれたが、代名詞のフルスイングを貫いた。

 ベンチに戻る前に「現役引退」のアナウンスが流れると、三塁側ベンチから出た巨人高橋由が花束を贈呈してがっちり握手。さらに涙ぐむ2人の娘から花束を受け取り、抱擁した。「昨日、家で泣くなよって言ったのに(笑い)。一緒に過ごす時間が少なく、迷惑掛けた。これまでサポートしてもらって本当に感謝している」。苦労を間近で見てきた家族には、どうしても感謝の言葉を伝えたかった。

 試合後も「小笠原コール」がやまなかった。竜党だけではない。オレンジに染まった左翼席からは、巨人時代の応援歌が鳴り響いた。生涯打率3割1分。記録にも記憶にも残る希代の野球職人が、笑顔でグラウンドを去った。【桝井聡】

 ◆小笠原道大(おがさわら・みちひろ)1973年(昭48)10月25日、千葉県生まれ。千葉・暁星国際高からNTT関東を経て96年ドラフト3位で日本ハム入り。06年に日本一に導き、同年オフ巨人へFA移籍。13年オフにFAで中日へ。178センチ、84キロ。右投げ左打ち。推定年俸4500万円。