29日にセ・パ両リーグが同時に開幕し、新元号の初代頂点をかけた長い戦いが始まる。スタートダッシュの鍵を握る開幕ローテーション。巨人ドラフト1位の高橋優貴投手(22=八戸学院大)は4月4日阪神戦での先発が内定した。

    ◇    ◇    ◇

巨人高橋が野球少年のように、目を輝かせた。全体練習前、東京ドームのマウンドに人生で初めて立った。直球のみを24球。一塁けん制も1球試し「スタンドからとは雰囲気が違う。早く投げる機会が来ないかなと思いました」。公式戦初登板初先発が内定した4月4日阪神戦へ、わくわく感があふれた。

高揚感を隠さずにデビューを待つ高橋を、優しく見守る人がいる。大学3年の春。エースとしてチームを勝たせられず「野球をやめたい」と父幸司さんに吐露した。苦しむ息子へ「私たちは野球をやってくれ、と言って大学に送り出したわけじゃない。野球が好きで、続けたいということで支援をしました。自分の人生ですから」。賛成も反対もしなかった。

勝負の世界は厳しい現実を突きつけられることもある。だから父には切なる願いがある。「野球はどんな時でも楽しいもの。つまらないものだと思わないでほしい」。阪神ファンの自身の影響で大好きになった野球を、嫌いになってほしくない。巨人のユニホームに袖を通し、1つの夢をかなえた息子の背中をそっと押す。

父がのめり込んだ猛虎の前に高橋が立ちはだかる。「ホーム球場なので多くのファンが集まると思う。全員の期待に応えたい」と堂々と言ってのけた。28日のイースタン・リーグのヤクルト戦(ジャイアンツ)での調整登板を経て、いよいよ、ドラ1が夢のマウンドに上がる。【桑原幹久】