6月の第3日曜日は「父の日」。幼き頃に追いかけた父の背中、遠く離れて暮らす父への思い、そして感謝の気持ち。野球人たちが父親との濃厚な思い出を語った。

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日本ハム上沢直之投手(25)が、父の思いも背負って投げた試合がある。

プロ入りの2年前。専大松戸で新チームのエースとなった2年秋。10年の秋季千葉県大会の3回戦で対戦した強豪の習志野戦は「ほえまくりましたね」。感情を、むき出しにして立ち向かった理由があった。

父和也さんは福島出身で元高校球児。地元の磐城で3年時にはエースを務めた。1年生だった75年夏はベンチ入りできなかったが、母校は甲子園に出場。準々決勝で対戦したのが、ヤクルト小川監督がエースだった習志野だ。最終的に全国制覇を果たした相手に、磐城は0-16と大敗した。

上沢は小さい頃から、当時の話をよく聞いていたという。試合前には「オヤジから絶対に打たせるなと言われていました」。結果は、1-0での完封勝利。父には高校時代の仲間から、歓喜や感謝の連絡が相次いだという。

「今ではオヤジのために投げることはないですけどね」と笑いながら振り返る上沢は、18日DeNA戦に先発予定。舞台となる横浜スタジアムは、少年時代に父と一緒に何度も野球観戦に訪れた球場でもある。父との思い出が残る場所で6勝目を狙う。【木下大輔】