9月7日、広島は胃がんからの1軍復帰を目指していた赤松真人(37)が今季限りで現役引退することを発表。16年12月に胃がんを患っていることを公表し、17年1月に手術。1軍復帰に向けて戦い続けていた。

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「がんの人のために続けるより、僕は大盛のためにやめたい」

いつだったか、赤松が吹っ切れたように話した言葉が忘れられない。大盛は、昨秋ドラフト入団選手でただ1人の育成選手。今季の支配下登録は見送られたが、2軍の成長株だ。球団の支配下登録は、7月29日にサンタナが加わり上限の70人に達した。自分が身を引かなければ、若手のチャンスを奪ってしまう。そんな思いが膨らんでいた。

胃がん切除手術を受けた赤松が現役を続けてこられた理由の1つは、同じ病気と闘う人を勇気づけたいと思ったからだ。2人に1人ががんになるといわれる時代。そうと分かった人がどれほどショックを受け、死の恐怖と闘い、家族も苦しむか。それがわかるから、闘う「同志」のためわが身にむち打ってきた。

プロ野球選手は1日5000キロ~6000キロカロリーが必要といわれるが、今でも「小4の息子より食べられない」と笑う。梅干し1個を食べただけで、嘔吐(おうと)することもあった。小学生並みのカロリー摂取で、ヘビー級アスリートのパフォーマンスを求められる。ありえないハンディキャップを背負ってきた。

1軍には届かなかったが、すべてやり切った。手術から2年半。がん患者より後輩の将来を思う赤松に、決断の重さと、プロ野球選手のプライドを見た。【広島担当=村野森】

◆赤松真人(あかまつ・まさと)1982年(昭57)9月6日生まれ、京都府出身。平安(現龍谷大平安)から立命大を経て04年ドラフト6巡目で阪神入団。07年オフにFA移籍した新井貴浩の人的補償で広島へ移籍。外野守備の名手として存在感を示し、10年にゴールデングラブ賞を受賞。17年1月に胃がん摘出手術を受け、復帰を目指してきた。182センチ、70キロ。右投げ右打ち。