日本ハム吉田輝星投手(19)に、中継ぎ起用プランが浮上した。24日、DeNAとのオープン戦(名護)で9回に登板。先頭打者こそ四球で歩かせたが、直球を主体に1イニングを無安打無失点で切り抜けた。

25日に春季キャンプを終えた後は2軍で調整し、3月6、7日の阪神とのオープン戦(甲子園)で登板する可能性が高くなった。首脳陣は救援での投げっぷりを評価しており、中継ぎで開幕1軍入りの可能性が出てきた。

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9回、マウンドで右腕を振る吉田輝の投げっぷりに、ベンチの栗山監督は思わずうなった。今キャンプ初となる1軍相手の登板は、先発ではなく救援での1イニング限定だった。中継ぎ起用で、19歳の直球がうなる。「腕を振る感じがやっと出てきた。こっちは手応えがある。短いイニングから入った方がいいのかな」。ここにきて、中継ぎでの開幕1軍入りが急浮上してきた。

吉田輝は「1イニングで自分の投球を見せるとしたら、直球かなと思った」と全13球のうち、変化球は1球だけ。「(アドレナリンが)出過ぎましたね」と先頭の知野こそ四球で歩かせたが、続く柴田を二ゴロ併殺打に、乙坂は球場表示で最速147キロを含む全4球直球勝負で二ゴロに打ち取った。

捕手のミットを射貫くような真っすぐに、厚沢投手コーチは「(1軍に)呼んでいいくらいの直球を見せてくれた。先発だと、どうしても構えるタイプ。今は、それはいらない。打者1人1人に全力で投げて欲しい」と納得。木田投手コーチも「短いイニングから(実績を積んで)エースになった投手はたくさんいる」と言ったように、首脳陣は先発という着地点へのステップととらえている。

1軍キャンプに合流して3日目。一流と過ごす貴重な時間を、無駄にはしなかった。14年沢村賞右腕の金子からは「ミスをしてもストライクゾーンに強い球を投げる」姿勢を学び、日本最多ホールド記録を持つ宮西からは「完璧を求めすぎないこと。『俺がお前なら直球しか投げない』と言われた」と、ぶれない心を教わった。持ち前の明るく素直な性格で先輩たちの懐に飛び込み、成長の糧としている。

栗山監督は「もう1発、チャンスを与える」と、オープン戦での再登板を即決した。来月6、7日に甲子園で組まれている阪神戦登板となれば、高校時代に甲子園大会準優勝の経験がある右腕にとって、大きな励みになりそう。次回1軍での登板が、開幕切符への大事なテストとなる。【中島宙恵】

▽日本ハム木田投手コーチ(吉田輝をまずは中継ぎとして1軍戦力とする可能性について)「球に力があるからね。短いイニングから(実績を積み上げて)エースになった投手もたくさんいる」

▽日本ハム宇佐見(9回に吉田輝を好リード)「持ち味の直球で押していこうと。球は来ているけど、前に突っ込んでいるから高めに浮く。腕を振りながら低めに投げられるよう、輝星自身が体で覚えるしかない」

▽日本ハム渡辺(今永から2安打。9回守備では吉田輝を落ち着かせる声掛け)「今永さんから、しっかり真っすぐを打てたのは良かった。(声掛けの内容は)言えないです(笑い)。あいつと僕の秘密なので。『ちゃんと呼吸せえよ』とは言いました」

◆吉田輝の昨季成績 登板4試合いずれも先発で1勝3敗、11回を投げて打者59人に被安打18、15失点で防御率12・27。13三振を奪い、奪三振率は10・64だった。右打者には32打数9安打で被打率2割8分1厘も、左打者には18打数9安打で被打率5割と打ち込まれた。

◆吉田輝と甲子園 金足農(秋田)のエースとして、18年夏甲子園に出場。県大会初戦から甲子園準決勝までの10試合で完投勝利も、大阪桐蔭との決勝は先発したが5回までに12失点で6回から右翼に。秋田大会5試合を636球で突破した鉄腕は、甲子園は6試合881球を投げて準優勝だった。ちなみに、06年夏甲子園を制した早実の斎藤は、聖地で948球を投げている。

<日本ハム高卒ドラ1投手の2年目(北海道移転後)>

▼ダルビッシュ有(04年)1年目は14試合5勝5敗も、2年目は先発ローテの一角で25試合12勝5敗、防御率2・89に躍進。絶対エースとなる起点となった。

▼吉川光夫(06年)1年目19試合4勝3敗より数字を落とす7試合2勝4敗、防御率6・23。最優秀防御率に輝くなど14勝5敗(防御率1・71)と開花したのは6年目。

▼中村勝(09年)1年目4試合1勝2敗、2年目は2試合で0勝1敗。

▼大谷翔平(12年)1年目13試合3勝から2年目は14試合11勝4敗、防御率2・61にジャンプアップ。2年目は打者としても87試合58安打で打率2割7分4厘、10本塁打。

▼堀端輝(16年)1年目4試合0勝1敗、2年目10試合2勝3敗1セーブ1ホールドと着実に成長し、3年目の昨季53試合4勝4敗1セーブ5ホールド。