困難は必ず、乗り越えられる。楽天銀次内野手(32)が12日、球団を通じ、新型コロナウイルスの影響で見通しの立たない現状での心境を示した。チームは3月30日から活動休止中。9年前のこの日、東日本大震災の影響で3週間延期となった開幕戦での勝利を味わった東北出身のバットマンが、緊急事態に直面している若手選手へ「我慢」の大切さを言葉に込めた。

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「耐える力、今は我慢の時期だと思います。『この時期を乗り越えれば、また素晴らしい環境の中で生活、野球ができる』。そう思いながら過ごすことが大切ですね」

“コロナショック”を乗り越える。銀次が9年前の出来事から学んだ教訓を今、再びかみしめている。

11年3月11日、東日本大震災。日常は一変。プロ野球の開幕は当初の3月25日から3週間延期された。

4月12日、千葉・QVCマリン。楽天はロッテを相手に開幕を迎えた。「見せましょう、野球の底力を」とスピーチした嶋の決勝弾で勝利。1軍2年目の銀次は出場しなかったが、未曽有の事態に立ち向かうチームの一員として、ベンチで戦った。

チームは13日で、活動休止開始から2週間を迎えた。球団施設は全て閉鎖され、自由に練習ができる環境ではない。震災時と現状が全て一致するわけではないが「自分の周りの方々、被災された方々の全ての行動が自分を強くしてくれた」と言う銀次には、若手選手へ伝えられることがある。

「今、自分自身が何をするのか、何をしたら強くなれるのかを考えることが重要だと思います。後輩たちには思いやりのある大人になってほしい。ともに乗り越えていくため、ほんの小さなことからやっていこう」

手洗い、うがいを欠かさず、外出を自粛する。当たり前のことを当たり前にやる。積み重ねでしか道は切り開けない。

もちろん、一プレーヤーとしての自覚を高く持っている。「野球は感覚のスポーツだと思っていますし、試合以外で感覚を維持することは不可能なこと」と難しさを理解した上でトレーニングに励む。自宅近くの公園でのランニングや自宅のスペースを使い、器具を使わない自重トレーニングを行う。「時間が空いた分をうまく使わないとプロじゃない」と言うように、やれること、できることを黙々と重ねている。

最後に、いまだ見えない開幕を待ち望むファンへもメッセージを送った。「今はとにかく我慢の時です。しっかり落ち着いて、考えて、大切な人を守ること。そこからまたみなさんの前で、素晴らしいスタジアムで、爽やかな顔をして野球をやりたいと思います。みなさんに会える日を楽しみにしています」。【桑原幹久】

◆11年4月12日VTR 東日本大震災の影響で開幕が3週間延期。仙台からバスで6時間半かけて千葉へ移動した楽天は、QVCマリンでロッテと開幕を迎えた。同点の7回2死一、三塁、選手会長の嶋がロッテ成瀬の失投を捉え、左翼席へ決勝の勝ち越し3ラン。この日が30歳の誕生日だった先発の岩隈が9回に3点を失うも、9回途中4失点と力投し6-4で勝利した。8年ぶりに現場復帰した星野新監督にとっては就任後初勝利となった。