ロッテは1日、育成3年目の和田康士朗外野手(21)の支配下選手登録を発表した。年俸420万円(推定)。新背番号63のユニホームに「やっとスタートライン。両親に感謝したいです」と笑った。

道なき道を1人、切り開いてきた。「心が折れそうになったこともありました」と回想する。中学でケガを機に野球から離れ、高校では陸上部に入部。走り幅跳びに励むも、白球を追う友がどうにもまぶしい。高校野球部ではなくクラブチームで野球を再開したから、甲子園には出場資格さえなかった。国内独立リーグを経て、今に至る。

50メートル5秒8の快足とフルスイングで、今春キャンプから強烈なアピールを続けた。3月1日の楽天戦の8回、浅い二塁ゴロで三塁から同点のホームを陥れた。首脳陣から喝采を浴びた試合後、夕暮れの球場で大塚外野守備走塁コーチから守備の特訓を受けていた。

「足は抜群、バットも振れる。選球眼もある。あとは経験と場数。どんな仕事でもそうでしょう」と期待を寄せ、大塚コーチは去り際に真顔でつぶやいた。「彼にその時間があるかは、分からないけれどね…」。

育成3年目。「もう失敗が許されない状況と思います」と自身を追い込みながら、ソフトバンク甲斐ら強肩捕手に足で挑んだ。その間も鳥谷の入団、右腕フローレスの登録があり、支配下選手枠は残り2つ。ただでさえ焦る状況下で球界の動きが止まり、アピールもできなくなった。「耐えるしかなかったです」。

王道でなくても、誰かが見ている。2カ月のブランク後も輝く若武者を、球団は1軍戦力と認めた。「和田は自分の力で支配下選手契約を勝ち取りました」という井口監督の言葉に、歩んできた道の全てが凝縮される。開幕ダッシュを狙う井口ロッテの、この上ない新戦力だ。【金子真仁】

 

◆和田康士朗(わだ・こうしろう)1999年(平11)1月14日生まれ。埼玉県東松山市出身。埼玉・小川高では都幾川倶楽部硬式野球団に所属。BCリーグ富山を経て17年育成1位で入団。左投げ左打ち。185センチ、77キロ

 

<高校で硬式野球部以外の主なプロ野球選手>

◆土橋正幸 1954年、東映に入団するまで硬式野球経験なし。日本橋高卒業後、実家の鮮魚店を手伝いながら地元の軟式草野球チームに所属した。通算162勝。

◆飯島秀雄 水戸農から目黒に転校後、早大-茨城県庁まで陸上選手。100メートル10秒1の日本記録保持者(当時)で、64年東京、68年メキシコの両五輪に出場。68年ドラフト9位で東京(現ロッテ)から外野手として指名を受け、プロでは代走専門で通算23盗塁。

◆日月(たちもり)哲史 関東高で陸上部に所属し、やり投げで87年国体6位入賞。投手として同年ドラフト外で西武の練習生に。4年後の91年ドラフトで同球団に8位指名され、支配下登録選手になるも1軍出場はなかった。

◆大嶋匠 群馬・新島学園ソフトボール部で高校総体、国体優勝。早大ソフトボール部から11年ドラフト7位で捕手として日本ハム入団。18年までプレーし、1軍通算18打数3安打。

◆松田亘哲(ひろあき) 昨年の育成ドラフト1位で中日入団。小学1年から中学まで野球に打ち込んだが、江南高ではバレーボール部でリベロ。名大入学後、野球に復帰。最速148キロの左投手。