左アキレス腱(けん)断裂の大ケガを乗り越えたオリックス伏見寅威捕手が、約1年ぶりに1軍戦に出場した。

7回に代打で登場し、そのままマスクをかぶった。

「ときは来たなという感じです。ずっと、この日を待っていたので」

脳裏には、悪夢が残っている。「忘れたくても、一生、忘れられない」。昨年6月18日巨人戦(東京ドーム)。1点を追う9回2死二塁で強振した際に負傷。立ち上がれなかった。「先は見えなかった。また野球、できるのかな…って。毎日、不安でした」。リハビリ生活は壮絶。孤独との闘いだった。「野球できるの、いいなあ…」。大阪・舞洲の球団施設でリハビリの毎日。仲間が躍動する映像を見るたび心が震えた。「アキレス腱を切ったら、もうキャッチャーはできない」。周囲の言葉に燃えた。「絶対グラウンドに戻るんだ」。どん底を味わった。

そんな記憶も「もう、忘れました。今しか見てないです。やってやるという気持ちだけ」と真っすぐに生きる。「いろいろ頭によぎるものがあるんです。入院して、車いすだったときを考えたら…」。寄り添ってくれた愛妻にも感謝だ。復活を遂げた男が、チームを押し上げる。【真柴健】