「池ちゃん」がよみがえった。6月に巨人からウィーラーとのトレードで加入した楽天池田駿投手(27)が2日、日本ハム14回戦(札幌ドーム)で移籍後初勝利を挙げた。

3点を追う8回1死一、二塁から登板。日本ハム平沼を二ゴロ併殺に打ち取り、直後の逆転劇につなげた。昨年自らに限界を感じ、ユニホームを脱ぐ決断にまで至った。それでも周囲のサポートに支えられ現役続行。“1勝”までたどり着いた。

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昨年10月。池田はスーツに袖を通した。3年目の昨季、1軍登板は2試合のみ。プロ野球選手としての限界を感じた。劣等感、虚無感…。耐えられず、自らユニホームを脱ぐ決断をした。ただ、可能性を評価する巨人側から引き留められ再考。もう1度、プロの世界で戦う意志を示した。

今年6月。開幕直後に風向きが変わった。楽天へのトレード。状況が一転した。妻とともに仙台へ転居。「巨人を離れる寂しさはあるけれど、トレードを伝えられた時はうれしかった。新しい土地で野球ができる、という気持ちが強かった」。

周囲のサポートに支えられた。慣れない新天地でも先輩、後輩問わず温かく迎え入れてくれた。「選手、コーチともにいい意味で近い関係でいろんな人に話しかけやすい。本当に移籍してよかったなと思います」。新たなユニホームにも、すんなりと染まれた。もう1度やってやる。素直に思えた。

だからこそ、運もツキも巡ってくる。3点を追う8回1死一、二塁。出番が回ってきた。日本ハム平沼を最近習得したシュートで二ゴロ併殺。ピンチをしのぐと、直後の攻撃で打線がつながった。ベンチ内では先発涌井をはじめ「池田に白星を!」と声がとんだ。大逆転。白星が舞い込み「追いつき追い越せ、といつも思っているけれど、実際にこうなると驚きでいっぱいです」。

スーツ姿から約1年。カメラを前にマイクを持った。「移籍も決まって環境の変化も大変だと思いますけど、いつも献身的に支えてもらっている妻に仙台に帰ったら渡したいと思います」。1、2軍を行き来し、朝と夜の時間が不規則でも、ずっと温かいご飯を作って待っている妻へ。2年ぶり2個目のウイニングボールを大切に握りしめた。【桑原幹久】