ソフトバンク周東佑京内野手(24)が「世界記録」を打ち立てた。7回の第4打席に左前打で出塁すると、あっさり二盗に成功。13試合連続盗塁を決め、1969年にバート・キャンパネリス(アスレチックス)が持つメジャー記録12試合を更新した。昨年の「代走要員」からの大出世。走りだしたら止まらない男の足から目が離せなくなった。

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勇気を振り絞った。力強く踏み出した周東の足が、加速度を増して二塁に向かった。球場の視線を一身に背負った末、二盗に成功。わずか数秒の出来事にも、スタジアムを最高に盛り上げた。

13試合連続で盗塁を決めた。遠い昔の遠い米国の地で生まれたメジャー記録を抜いた。69年にバート・キャンパネリス(アスレチックス)が打ち立てた12試合連続を抜き去った。「実感はないです」。ビッグな記録更新にも周東は淡々と振り返った。

第4打席だった。「盗塁というより1本打ちたかった」。3打席出塁できなかったことが悔しかった。左前打で出塁すると、あとは「決断」するだけだった。「(西武小川は)クイックが速い投手なので。スタートは良くなかったが、リードは取れていた」。2球スタートを切るタイミングを計り、3球目にスタートして「世界記録」を打ち立てた。

東農大北海道オホーツク時代から「メジャー級」だった。当時の指揮官だった東農大の樋越勉監督(63)は「一塁への駆け抜けタイムが3秒4。当時、マリナーズで活躍していたイチローが3秒6と言われていたから、スカウトも驚いてました」と振り返る。「いろいろと周囲から言われますが、浮かれないようにしたい」。周東はそれでも謙虚さを失わない。

キャンパネリスはメジャーで盗塁王6回。通算649盗塁をマークした。引退後は87年から西武の守備走塁コーチを2年務め、工藤監督も現役時代だった。「マークされながら決めたのはすごいのひとこと。驚く限り」と指揮官も目を丸くした。

「記録を伸ばすことができればうれしいですが、そこはあんまり意識せず試合に臨みたい」。もはや一塁への出塁は「二塁打」を意味する。周東の足だけは誰も止められない。【浦田由紀夫】