水も滴るいい男! 首位阪神が神宮の“水中戦”を逆転で制した。雨の続いたヤクルト戦。殊勲者は主将の大山悠輔内野手(26)だった。2-3の8回に梅野の適時打で追い付き、なお2死二、三塁で勝ち越しの10号3ラン。元4番が7番に降格して3戦2発と発奮して、4カードぶりに勝ち越した。敗れた2位巨人とは2・5ゲーム差。9日から甲子園に戻ってその巨人と首位攻防戦だ!

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大山が珍しく右拳を突き上げた。グッと歯を食いしばって目線を下げるも、あふれ出る感情には逆らえない。打球の右翼席着弾を確認すると、降りしきる雨粒を右手ではじき飛ばした。

「チーム全員で作ったチャンスを生かさないとダメなので。とにかく必死で打ちにいきました」

8回表。6番梅野に同点打が飛び出した直後の2死二、三塁。「打席に集中していた。自分の世界にしっかり入れた」。清水の外寄り144キロ直球を強く押し返し、右翼席に届かせた。値千金の勝ち越し3ランは自身4年連続となる2ケタ弾。三塁ベンチ前で糸原が、北條が跳びはねる中、主将は雨空に拳を掲げた。

常日頃から見せる柔和な笑顔の裏には、燃えたぎる闘志が隠されている。周囲がどれだけ温和なイメージを持っていても、本人は苦笑いで首を振る。

「穏やかかどうかは正直分からないですけど…負けず嫌いだなとは自分で思っています。負けたくない気持ちは常に持っている」

幼少期から続けてきたスポーツは野球だけ。小学生時代は習字教室に通ったこともあったが、それは「自分1人では決められない習い事だったから」。自称「飽き性」で「好きなことはずっと続けられる」という性格。どれだけ好青年であっても、一野球人としての本能には逆らえない。

「ここまで本当に迷惑ばかりかけている。チーム全員が頑張っている。自分だけ乗り遅れないようにと思ってやっています」

不振続きで6月29日ヤクルト戦から4番を外れ、7番に降格して3戦目。6日ヤクルト戦の先制ソロに続く決勝弾に「こういう状況の中でも応援してくれているファンの皆さんがいる。しっかり仕事ができて良かったです」と力を込めた。

チームは3位ヤクルトとの敵地3連戦に勝ち越し、前半戦最後の9連戦を上々の形で滑り出した。9日からは甲子園で2位巨人との3番勝負に突入する。

「本当に1試合1試合が勝負だと思っている。気を抜かないように、もう1回全員が一丸となって頑張りたいと思います」

まだゲーム差はわずか2・5。主将はナインの総意を代弁した後、早くも決戦に目を向けた。【佐井陽介】

○…試合は開始前から雨が降り続き、終盤には雨脚が強まった。7回はサンタナの遊撃へのゴロに対して、中野が丁寧にワンバウンド送球して手元での滑りを防いだ。8回は糸原の左翼への飛球を青木がグラブに当てて落球する失策。投手清水は1死からマルテに死球を与えた後にはマウンドに砂を入れてもらうなど、投手は足場に苦労した。ヘルメットから雨滴が落ちる中、阪神はこの回4点を奪った。直後の守りでは三塁手山本が一塁へ悪送球するなど、厳しい状況で9回を戦い抜いた。

▼阪神大山が今季9度目の勝利打点をマークし、マルテの8度を上回りチーム最多となった。4年連続で2桁本塁打に到達し、チームの10本以上は佐藤輝20本、サンズ、マルテの各15本に次いで4人目。阪神のチーム4人以上が2桁本塁打は、13年の4人(マートン19、新井貴15、新井良14、鳥谷10)以来8年ぶり。

▼阪神は今季1点差試合で両リーグ最多の15勝(6敗)。勝率7割1分4厘も12球団最高だ。