オリックスの若きエースが東京オリンピック(五輪)へ視界良好だ。山本由伸投手(22)がソフトバンク戦に先発し、7回無失点の力投で自己最多の9勝目を挙げた。侍ジャパンでは主戦投手として期待されており、右腕の快投は悲願の金メダルへ明るい材料だ。チームはきょう10日に勝てば、前半戦首位ターンの可能性がある。

スコアボードにきれいな「輪」を並べた。オリックス山本が7回無失点で、リーグトップタイで自己最多9勝目を飾った。最速156キロを計測するも、6回まで毎回安打を許す投球に「ブルペンで、あまり調子が良くなくて。最低ラインの修正はできた」と明かした。

好不調の波を抑えられるのは、独自の調整法にある。先発登板当日。早出練習で、大型ダーツのような矢を投げる「ジャベリックスロー」で、念入りに体の状態や投球フォームを確認する。塁間ほどの距離を投じ「真っすぐ投げられそうに見えて、意外と難しいんですよ?」と白い歯を見せる。

あるとき、190センチ、104キロのラオウ杉本も挑戦したが、正面に立つ山本まで届かず「これ、どうやって投げるん?」と困惑。山本は「胸を張る、ですかね。リリース位置だったり、『投げる』という感覚よりは全身をうまく使えるか」と返答。腕だけでなく胸や背中、全身をフル活用して、球威ある球を繰り出す。

「体の使い方が全てだと思ってます。バンバン鍛えるだけじゃなくて、どう使えるか。持っている力を、しっかり出せるように」

ストレッチでは、ブリッジなどの「由伸体操」で整える。「どんな体勢でも力が出せるように」とバランスを確認する。逆立ちして数メートル歩き「体の軸、体幹の安定性、柔軟性。意識はそこ。いつも普通に立つのは足だけど、それがただ反対になっているイメージ」と説明する。

防御率1・82、121奪三振もリーグトップ。投手3冠には「1番で終われたらうれしいですけど“宮城さん”がいる」とおどけた。東京五輪に向け、これがシーズン最終登板。日本代表でも大車輪の活躍が期待され「一発勝負。違う緊張感の中での登板」と胸を躍らせる。考え抜いた練習方法を武器に、22歳の右腕が国際大会でもズドンとミットに突き刺す。【真柴健】