「誰だ、この人は!?」と思った方は多いはず。西武のドラフト1位指名の抽選で、飯田光男常務取締役球団本部長(55)が抽選役として登場した。ひときわ小柄な体格で、屈強な体つきの監督陣とは異彩を放っていた。それもそのはず、もともとは西武鉄道出身で、池袋駅長などを歴任した「鉄道マン」だった。

26年所属した西武鉄道から、15年3月に西武ライオンズへやってきた。19年1月から球団本部長となり、チームの編成面にも大きく重責を担う。普段からチームに同行して、表に出る機会は少ないが、その人柄は温和な人。くじ引き役をするにあたって、辻発彦監督が「そりゃもうみんなでちゃかしていましたよ。とりあえず頑張ってくれと背中を押して会場に行ってもらいました」と言うように、いじられながら場をなごます空気感をまとった方なのだ。

2年前の19年12月のハワイ優勝旅行だった。報道陣も招待していただいたマジックショーがあった。舞台上で車が宙に浮いたりする多数のイリュージョンを展開。トークではマジシャンが舞台をおり、いじり役のお客さんを物色し、話し掛けたのが飯田常務だった。英語での問い掛けに、発した単語は「YES」と「OK」だけ。あとは親指を立て、笑顔と大きな声で切り抜けるやりとりに、会場は大爆笑。マジシャンの鋭い嗅覚に即興で答えた。

普段は裏方役に徹しているが、ドラフトという年に1度の大舞台で、公表していた西日本工大・隅田知一郎投手の交渉権を引き当てた。満面の笑みで喜ぶ姿に、ツイッターでは「飯田常務」が一時トレンド入り。見事な“ハンドパワー”を披露した。【西武担当=栗田成芳】