復活した“神様”が決めた。ヤクルト川端慎吾内野手(34)が、延長12回2死一塁で代打で登場。捕逸で2死二塁となると、フルカウントから7球目の内角高め130キロを詰まらせながらも、左前に運ぶ決勝打。今季代打の切り札としてチームを支え続けたバットマンが、20年ぶりの歓喜へ導いた。

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塩見の生還を見届けると、川端は右手を神戸の夜空に突き上げた。サヨナラ勝ちのように、選手全員がベンチを飛び出して喜びを爆発。跳びはねる仲間の姿を見ながら、ニッコリと優しくほほ笑んだ。日本一が決まると、目を真っ赤に。「本当にめちゃくちゃうれしかったですし、こんなに涙出るとも思わなかった」とうれしさがあふれ出た。

忘れ物を取り返しに来た。前回日本シリーズに進出した15年は、シーズンで首位打者と最多安打を獲得。主力として出場したが、念願の日本一に届かなかった。1勝4敗。自身も打率1割6分7厘と低迷。「何もできなかった。本当に悔しい思いをした」と振り返る。

以降は慢性的な腰痛にも悩まされ、満足のいく結果も残せず。1軍の舞台から遠ざかった。昨季に腰の手術を受け快方。不安なくスイングができるようになった。今季は開幕から切り札を担った。代打として、目の前の1打席に懸けてきた。安打を1本ずつ積み重ね、史上歴代2位のシーズン代打30安打。頼れるバッターとして控えた。いつしかファンの間で“代打の神様”と言われるようになった。「そうやって呼ばれることはうれしい」と照れくさそうに言った。

出番は1日1打席がほとんど。目を慣らすため、打席で、高速に設定したマシンの球を見送り続ける練習も行う。仕事人に徹し、34歳でつかんだ日本一。「去年、一昨年と本当に苦しい、悔しい思いをしていたので、諦めずに練習してよかった」。必死にもがいてきた日本で一番長いシーズンとなった今年、最後の最後に勝利の女神が、川端にほほ笑んだ。【湯本勝大】