中日は13日、今季までロッテでプレーした大嶺祐太投手(33)と育成契約を結んだと発表した。大嶺は沖縄・石垣島出身。かつて八重山商工のエースとして甲子園をわかせた“南海の速球王”が、プロ16年目を迎える来季、新たなユニホームに袖を通す。

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石垣島の星空は格別だ。冬から春にかけては、南十字星を見ることもできる。地元ならではの鑑賞スポットもあるのだろう。大嶺に穴場を尋ねた。

「穴場、ありますよ。車じゃないと行きづらいところなんですけど。何て言えばいいのかな。サトウキビ畑とかがあるようなところで、街からそんなに遠くないんですけど。近くに何か目印があるかというと、あれで。すごく説明しづらい場所なんですよね。あのへん、何て言えばいいのかな…(中略)。ただ、本当にそこからの夜景はきれいなんですよ」

結局、場所は分からないままだったけれど、懸命に説明しようとしてくれた。温かい。

そういえば故郷のことも「あったかい」と表現していた。「人もそうですし、気候も。全てにおいて、こう、なんか、親身になってくれるというか、ちょっと相談しただけで自分が求めた以上のことをやってくれるような気がします」。

ロッテ入りした縁もあってか、石垣島キャンプが実現した。島の子どもたちにプロ野球を見せられるようになったことを、何よりも喜んだ。盛り上がりが高まった島から、西武平良海馬投手(22)も育った。

右肘のトミー・ジョン手術を受けた。今年、復活の白星を挙げた。活躍したいわけがあった。

「たぶん今後(トミー・ジョン)手術をする人は増えてくると思うので、その人たちの希望というか、絶対に大丈夫というところを見せれたらなと」

人と人とが濃密な島で育まれた“誰かのために”の心。島での少年時代と、島を離れてからの時間がもうすぐ等しくなるほど大人になっても、根っこは簡単には変わらない。いつも穏やかに「ありがとうございます」と口にする。今回もきっと口にする。手を差し伸べてくれた中日のために。【ロッテ担当=金子真仁】