日本ハム伊藤大海投手(25)が、背水の陣を乗り越えた。

西武戦に先発し、7回108球を投げて、4安打6奪三振、1失点に抑え、待ちに待った今季初勝利を挙げた。開幕後から3連敗を喫し、さらに黒星を重ねると2軍降格も視野に入る危機だったが、本来の安定感のある投球を見せ、自身と首脳陣が抱えていた不安を一掃した。チームも9安打で7点を奪い、今季初の3連勝を飾った。

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伊藤が“ラストチャンス”の試合で勝利を挙げ、苦しいトンネルからやっと抜け出した。直近の試合で3連敗し、勝利を渇望してきた。「変に力まないこと」をテーマに掲げ、着実にアウトを積み重ねた。「バランスと方向性だけを意識して、投げ急がないこと」を心掛けた投球が好投につながった。「球自体が良かったかどうかは分からないですけど、要所要所で低めに集められたので、その辺は良かったのかなと思います」と喜びをかみしめた。

敗戦が続く中で募る不安は伊藤をブルペンへいざない続けた。4月28日から30日まで「今まで絶対にない」というブルペン3連投だったが、「結局、昨日も…」と1日の移動日もエスコンフィールドのブルペンに伊藤はいた。極めて異例の4日連続ブルペンで「体はぼろぼろでしたけど、何とか気持ちで粘れました」。前回登板からこの日まで、満足に眠れない日々も続いていた。練習による疲れもあったが「不安の方が勝っちゃっていたので」。ようやく1勝目を挙げ「やっとぐっすり眠れると思います」と快眠を得られそうだ。

7回を1失点に抑え、首脳陣の懸念も吹き飛ばした。4月25日のオリックス戦で3敗目を喫し、新庄監督は「次も悪かったら考える」と厳しい言葉を放っていたが、試合後、「それで変われる選手だと思っている」と再起した姿をねぎらった。建山投手コーチも「前回と投げている形が違った。苦しんで、いつもと違うルーティンでしっかり修正してくれた」とブルペン入りを重ねて登板に備えた姿勢を評価した。

伊藤は「この1週間、気にかけてくれた人たちがたくさんいるので、そういう人たちにいい連絡ができるかなと思います」。苦難を乗り越えた侍右腕が、今季初勝利をきっかけに常勝投手に生まれ変わる。【石井翔太】

◆侍ジャパン投手陣の先発勝利 チームで今季先発を務める10投手のうち、4月4日に巨人戸郷、5日にエンゼルス大谷、ヤクルト高橋奎、6日にロッテ佐々木朗、オリックス山本、中日高橋宏、7日にオリックス宮城が次々とシーズン初勝利を挙げた。21日にDeNA今永が侍メンバー最後に登場し、初登板初勝利。パドレス・ダルビッシュは4度目の登板となった23日に初白星をマーク。日本ハム伊藤だけが未勝利だったが、ラストで勝利投手となった。

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