巨人が伏兵のサヨナラ弾で、伝統の一戦を制した。

プロ6年目の岸田行倫捕手(26)が延長10回2死、右中間へ代打サヨナラ本塁打をたたき込んだ。阪神戦での代打サヨナラ弾は11年高橋由伸以来、12年ぶり。捕手争いで大城卓、小林としのぎを削る“第3の男”にとって通算2本目のアーチは、同学年で27歳の誕生日を迎えた4番岡本和への祝砲にもなった。負ければ貯金消滅の危機だったチームは、今季7試合目のサヨナラ勝利を収め、上位争いに食らい付いた。

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岸田が耳打ちされた。「ホームランを狙ってこい」。同点の延長10回2死、代打出場に緊張で胸が高鳴る中、阿部ヘッド兼バッテリーコーチに言われた言葉が、言霊となった。阪神加治屋の2球目カットボール。ぐんぐん伸びて右中間席へ飛び込む3年ぶりのプロ2号が、野球人生初のサヨナラアーチとなった。ナインから水を全身に浴び「自分がめちゃくちゃ水用意してたんで、逆の立場になって不思議な感じ」と目尻を下げた。

愛称は「きっしゃん」。円陣の声出し役ではギャグや小道具を使って「円陣番長」の名で定着したひょうきんな人柄の持ち主だが、昨年の開幕前には元木コーチからメガネなどの「小道具禁止令」を受けた。「野球でもっと目立っていきたい。今年はプレーで盛り上げたい」と視線はグラウンド上へ向いた。

「表情にレギュラーの貫禄を出しなさい」。春季キャンプで原監督からハッパをかけられた。大城卓、小林らと争う6年目の今季、スタメンマスクはわずか2試合で、8打席目だった。出番が限られる中でも「チャンスは多くない。与えられた場所で力を発揮できるように準備している」と集中力を切らさなかった。試合中は目薬をいつも以上に何滴もさし、視界は良好だった。

同学年の岡本和の誕生日を祝う一打になるとともに、連敗を3でストップし、チームの流れを変えた。「思った以上の結果になった。またこれからも頑張っていきたいと思います」。円陣番長がプレーでファンに笑顔を届ける。【小早川宗一郎】

◆岸田行倫(きしだ・ゆきのり)1996年(平8)10月10日、兵庫県生まれ。大阪ガスから17年ドラフト2位で巨人入団。通算99試合、115打数29安打、2本塁打、9打点。本塁打は20年10月31日ヤクルト戦で長谷川から打った1本だった。176センチ、88キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1600万円

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